万年初心者のための世界史ブックガイド

2017年11月8日

川成洋 坂東省次 桑原真夫 『スペイン王権史』 (中公選書)

Filed under: スペイン — 万年初心者 @ 07:01

王国統一以後、ハプスブルク朝とブルボン朝の歴史を現代まで記したスペイン史。

その前史にも簡略に触れられている。

イスラム勢力侵入により西ゴート王国滅亡、北部の山岳地帯に拠ったキリスト教徒が、ドン・ペラーヨを始祖とするアストゥリアス王国建国。

アストゥリアスはレオン王国と呼ばれるようになるが、その一部であったカスティリャが強大化。

レコンキスタの中で、ナバラ王国のサンチョ3世(大王)が一時覇権を握るが、1035年その死後、ナバラ王国からアラゴン、カスティリャが分離、カスティリャはレオンを併合。

フェルナンド2世とイサベル1世の「カトリック両王」、カルロス1世(カール5世)、フェリペ2世は、高校世界史で既出なのですっ飛ばして、それ以後の国王の治世をごく簡単にメモしていく。

 

 

フェリペ3世(1598~1621年)

寵臣政治の下、国力の衰退と人口の激減が進み、オランダが独立、ムスリムからの改宗者を追放。

 

 

フェリペ4世(1621~1665年)

寵臣オリバレスが権勢を揮い、三十年戦争に介入して敗北、ウェストファリア条約後も続いたフランスとの戦いを終結させたピレネー条約でルシヨン、アルトワを割譲。ポルトガル再独立。

 

 

カルロス2世(1665~1700年)

病弱で、その死によってスペイン・ハプスブルク朝は断絶、ルイ13世、14世共にスペイン王室から后を迎えていた関係で、スペイン継承戦争を経て、ブルボン朝が成立することになる。

 

 

フェリペ5世(1700~1746年)

ルイ14世の孫。地方ごとの差異を排した政治的・法的一元化を実現。各種アカデミー設立や国語統一など文化事業にも実績を上げたが、鬱病を患うこともあった。

 

 

フェルナンド6世(1746~1759年)

英仏間の七年戦争で中立を保ち、産業振興と改革事業を推進した実り豊かな治世と評価されている。

 

 

カルロス3世(1759~1788年)

前王の異母弟。七年戦争に参戦し、1763年パリ条約でイギリスにフロリダ割譲、代わりにフランスから(ミシシッピ川以西の)ルイジアナ獲得、内政では「啓蒙王」の名の通り、社会改革事業を推進、イエズス会を追放。

 

 

カルロス4世(1788~1808年)

即位直後にフランス革命勃発。ゴドイが実質政権担当。共和国フランスに宣戦するが敗北、講和。それはまだいいとして、ナポレオンが権力を握るや、ゴドイはその傀儡と化し、フランスと同盟、1805年トラファルガー海戦で惨敗、スペインはその海軍をすべて失い、それが中南米植民地独立の契機となる。1808年皇太子の反仏陰謀を受けて、ナポレオンは国王父子をフランスに連行、兄のジョセフをスペイン国王に就ける。「ゲリラ」という言葉の語源になった国民的抵抗とイギリスの支援によってナポレオン軍を退けることに成功。父王と異なり、この王の評価は極めて低い。

 

 

フェルナンド7世(1814~1833年)

国民の歓呼の中、帰還し王位に就いたが、アンシャン・レジームの復活を企図、自由主義勢力との対立激化、神聖同盟による軍事干渉も受け、中南米植民地は次々と独立。

 

 

イサベル2世(1833~1868年)

ブルボン朝では初の女王、前王の弟カルロスの即位を主張する一派(カルリスタ)の反乱が起こる。自由主義勢力が政権を握るが、穏健派と急進派の対立が激化、その中で1868年(明治元年だ)発生したクーデタで女王は退位。

 

 

アマデオ1世(1870~1873年)

いくつかの候補の中から選ばれて即位した、イタリア王室出身の国王。本書では記載が無いようだが、普仏戦争のきっかけの一つであるスペイン王位継承問題というのは、この時の混乱時のことでしょう。政界の分裂・混乱に嫌気がさし、2年余りで自発的に退位。1873年第一共和政が宣言されるが、アナーキストや地方分離運動による反乱が頻発、安定と秩序を求める声が高まり、1874年王党派のクーデタが成功。

 

 

アルフォンソ12世(1874~1885年)

カルリスタ戦争を完全に集結させ、立憲君主制を確立、保守・自由両党による政権交代が曲がりなりにも実現、順調な経済成長を遂げる。

 

 

アルフォンソ13世(1886~1931年)

父王病死後の誕生。1898年米西戦争でキューバ、プエルトリコ、フィリピン、グアム島を割譲、翌年ミクロネシアをドイツに売却、モロッコ以外の海外領土をすべて失う。第一次大戦で中立維持、大戦景気に沸くが、貧富の差は拡大、短期政権が続き、アナーキストによる暗殺行為が頻発、アブデル・クリーム率いるモロッコの反乱も起こり、1923年プリモ・デ・リベラ将軍の軍事政権が樹立。一時的緊急避難としてならともかく、軍事政権の長期化を支持したことは、国王の大きな過ちだった、と本書では評されている。反軍政運動の中で、君主派も共和派に移行し、30年プリモ・デ・リベラ辞任後、31年国民投票で第二共和政成立。アルフォンソ13世は、41年ローマで死去。

 

 

31年第二共和政、36年人民戦線内閣とスペイン内戦勃発、39年フランコ勝利。

この辺のことは、本書でも多くの紙数を割いて叙述されているが、ここでは一切省略。

一言だけ書けば、以前書いたような、スペイン内戦ではフランコが勝って良かったんではないか、というような意見はやはり言い過ぎかもしれないが、それでも私には共和国と人民戦線が絶対善とは思えない。

極右と極左への政治的分極化がもたらした不幸な出来事、ぐらいに解釈するのが適当ではないかと思える。

1939年4月、第二次大戦勃発の半年前、フランコが内戦終了を宣言。

フランコは、巧みに大戦への参戦を避け中立維持に成功、冷戦の進行で西側陣営への接近が可能となり、戦後の国際的孤立も解消。

以前も書きましたが、戦前の日本もなぜこのような道を辿れなかったのかなあと思います。

アルフォンソ13世の子ドン・フアンは、フランコに王政復古を要求するが、フランコは当座拒否。

内戦ではフランコ側を支持したものの、開明的な面も持つドン・フアンを警戒したものと見られる。

フランコは代わりにドン・フアンの子フアン・カルロスを国王候補としてスペイン国内で教育することを提案、ドン・フアンはこれを受け入れる。

フアン・カルロスは、面従腹背でフランコに接し、その死後1975年即位。

フアン・カルロス1世は、数年間、フランコ派と軍部の動向を慎重に見極めながら、首相スアレス、国会議長タトーと協力しつつ、漸進的にスペインを議会制民主主義体制に移行させることに成功。

1981年、スアレス首相辞任の際、一部将校が国会に突入しクーデタ未遂を起こすが、国王はテレビ演説で断固反対の決意を示し、鎮圧に成功。

80年代、西側主要国でこのような事件が起こっていたことは驚きである。

以後、社会労働党と国民党による政権交代が続く。

本書刊行の翌年、2014年フアン・カルロス1世は退位、フェリペ6世が即位している。

 

 

 

相当分厚い本だが、読みやすいので、ページ数はさして苦にならない。

スペイン通史としては、これまで茨木晃『スペイン史概説』という、極めて入手し難い本を基本に考えていたが、本書をそれに替えても良い。

十分有益な本であると思います。

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2009年4月15日

岩根圀和 『物語スペインの歴史』 (中公新書)

Filed under: スペイン — 万年初心者 @ 06:00

このシリーズでこの国だと、本来もっと早めに読んでおくべきではあるのだが、本書はこれまで全然読む気が起こらなかった。

なぜかと言うと、主要対象年代の偏りがあまりに極端だから。

目次で、全部で六つある章のタイトルを「スペイン・イスラムの誕生」「国土回復運動」「レパント海戦」「捕虜となったセルバンテス」「スペイン無敵艦隊」「現代のスペイン」と眺めるだけで、それがわかろうというもの。

全盛期の15・16世紀だけに集中して紙数が割かれており、それ以外の時代は極めて不十分。

英米仏独中ほどでなくても、スペインのような主要国の歴史を新書一冊にまとめるのは至難の業だと理解しているが、藤沢道郎『物語イタリアの歴史』というあまりに見事な成功例もあるのだから、本書の欠点が一層目立つ。

たまたま他に読む本が手元に無かったので通読したところ、全然面白くないとか興味が持てないということはありませんでした。

しかし内容のアンバランスさは如何ともしがたい。

この欠陥は通史としては致命的。

同シリーズでは、本書だけでなく宮田律『物語イランの歴史』も相当酷い。

20世紀以前は全くの付け足しに過ぎず、内容はどう見ても『イラン現代史』と言うべきもの。(その現代史の記述も大して重要で貴重だとは思えない。)

今からでもそう改題して、『物語』シリーズのイラン枠を空けてより専門に近い方に執筆を依頼すべきではないか。

本書を実際読んでみても、事前に持っていたマイナスイメージを払拭する感想は抱けなかった。

あまりお勧めしません。

2009年3月18日

高橋裕史 『イエズス会の世界戦略』 (講談社選書メチエ)

Filed under: スペイン — 万年初心者 @ 06:00

最初、カテゴリはイタリアにしようと思っていたのですが、読んでみるとスペインの方が適当かなと感じましたので、そうします。

イエズス会の海外布教のうち、特にインドと日本での活動に焦点を当て、その組織と情報網、世俗国家との関係、経済的基盤、異教文化への対応、布教のための軍事力への態度などの側面を叙述したもの。

イエズス会の起源と展開全般について、広く浅く、わかりやすく平易に説明してくれる本なら良かったのだが、残念ながらそういう著作ではない。

書き下ろしに混じって、学会誌への論文や大学での集中講義ノートなどを元にした章があり、煩瑣で退屈な部分もある。

1494年のトルデシリャス条約でアフリカからインド・東南アジア・中国・日本はポルトガルの進出地域と定められたので、この地域へのイエズス会の布教はポルトガル王国との緊密な協力の下に進められることになる(1580年フェリペ2世によるポルトガル併合後はスペインと)。

財源として、ポルトガル王室からの給付金の他、不動産保有や貿易斡旋など会自身が行なう経済活動からの利潤があり、こうした世俗的活動はしばしば内外の批判にさらされる。

この経済関係の章は、やたら細かな事例が長々と出てくるので参る。

その一つ前の、異文化と布教活動との衝突・妥協を扱った章は読む前は面白そうだなあと思っていたが、実際読むと比較文化論みたいな文章はほんのわずかで、日本イエズス会の組織関係の話が多く、はっきり言って期待ハズレ。

ちなみにイエズス会の日本教区は、京都を中心にした都地区・長崎などの下地区・豊後地区の三つに分かれていたそうで、何か妙な分け方のように思えるが、日本の中心としてのミヤコとキリシタン大名の大村純忠が長崎を寄進した下地区、同じく有力キリシタン大名大友宗麟の領地の豊後と考えれば得心が行く。

最後の軍事に関する章はまあ一番面白い。

異教徒の攻撃・迫害に対する正当防衛としての武力を認める立場から、キリシタン大名への軍事援助に始まり、後には会自身の武装化や重要拠点長崎の要塞化が行なわれる。

一方、「キリスト教勢力による日本征服」への日本人の怖れが布教の妨げになっていることも理解されており、日本国内での戦乱への介入を戒める指令が日本イエズス会やローマ本部から出されている。

しかし豊臣秀吉の迫害を期に、「教会過激派」の宣教師たちの間には対日武力征服と武力総改宗論が燻ぶり続けることになる。

叙述対象としてやや特殊な事項が取り上げられていて、イエズス会全般の歴史を知るには少し不適当な印象を受ける。

初心者にとっては使いにくい本。

読むのならば、細かなことは拘らず、布教活動の大体の雰囲気や概略がわかればよいと構えた方がいいでしょう。

そうじゃないと、さほど長い本ではないとは言え、挫折しかねない。

必読、とまではやはり言えませんねえ。

余裕があればお読み下さいといった感じです。

2008年1月30日

金七紀男 『増補版 ポルトガル史』 (彩流社)

Filed under: スペイン — 万年初心者 @ 06:00

カテゴリは「スペイン」でいいですね。

建国はカスティリャからの独立という形だし、その後の経緯からしてカスティリャ・アラゴン・ナバラ・カタルーニャと同じくスペイン王国を形成してもおかしくなかったようだし、フェリペ2世時代から60年ほどは実際に併合されていたし。

先史時代からローマ、西ゴート、イスラム支配を経て、ボルゴーニャ朝の独立、アヴィス朝による大航海時代の飛躍、フィリペ朝の併合時代、ブラガンサ朝による再独立、1910年共和政移行とサラザール独裁、1974年国軍運動クーデタと自由化、1986年EC加盟から21世紀初頭までを満遍なく叙述。

経済史・社会史にも多く紙数を割いているが読みやすい。(文化史は読み飛ばしたところが多かったが。)

政治史的記述については、高校世界史ではジョアン2世(とエンリケ航海王子)以外全く出てこない歴代の国王をほとんど省略せず一人一人の治世を丁寧にたどっているのが非常に良い。

巻末に詳しい王朝系図が載っているのも実に親切。

初心者が読む通史としては相当優れているんじゃないでしょうか。

かなりお勧めできる本です。

2008年1月21日

アントニオ・ドミンゲス・オルティス 『スペイン三千年の歴史』 (昭和堂)

Filed under: スペイン — 万年初心者 @ 06:00

えー、すみません、これもです。半分も読んでません。

前書きと途中までの叙述から判断して、(1)人為的な国民統合を目的とする古色蒼然としたナショナリスティックな一国史を否定しながら逆の極端に陥るのも避け、(2)自国の現状を抽象的に理解するための前提や資料として現代史のみを重視し「何の役にも立たない」時代を無視するという「社会学偏重主義」に批判的で、(3)「他の歴史の支えとなる政治史のスケッチ」を書こうとする著者の姿勢には、大いに賛同するものであります。

しかし、当たり前ですが、スペイン人が対象読者に想定されている以上、日本人がスペイン史の入門書として読むにはちょっとチグハグな印象を受ける。

細かな史実には深入りしない大まかな概説には違いないんですが、読者が元々ある程度の事実関係を知っていることを前提にしているようで、一番基礎的な政治史としては使いにくい。

ケルト人・ローマ化・西ゴートから始まり、711年のターリク率いるウマイヤ朝軍侵入、ペラヨによるアストゥリアス王国建国とそのレオン王国への発展、以後のレコンキスタの進行と、何とか辛抱してフェルナンド5世とイサベル女王の「カトリック両王」のところまでは読みましたが、以降はギブアップ。

フェリペ2世以後の国王の系譜などを我慢して読み進めればそれなりに役立つ気がしますが、むしろ以前記事にした茨木晃『スペイン史概説』をもう一度熟読した方がいいんじゃないかと思ってやめました。

もうちょっとレベルを落として、基本的な事実関係を重点的に記述した本が欲しいですね。

あまり決め付けるべきではないんでしょうが、中公新書の『物語スペインの歴史』と『同 人物編』がもう一つの出来なのが惜しまれます。

2007年4月9日

ローマックス 『レコンキスタ』 (刀水書房)

Filed under: スペイン — 万年初心者 @ 06:00

これは最後まで読んだことは間違いないのだが、中身はさっぱり思い出せないという、私にはよくあるパターン。

類書が少ない中世スペイン史なので貴重だとは思うが、初学者には詳しすぎる。

高校教科書レベルの知識しかない私のような人間が読むものではなかった。

最低限、先日絶賛した茨木晃『スペイン史概説』程度の本を事前に読んでおくべき。

内容はほとんど覚えていないのだが、末尾でレコンキスタ終了後のスペイン・ポルトガルによる新大陸征服に触れ、征服によるキリスト教化のおかげで中南米はその後の宗教戦争や覇権戦争に巻き込まれることを免れたと断言しているのは少々驚いた。

訳者も解説で「末尾の政治的見解には反発を感じる向きもあろうが、ひとつの意見として受け止めてもらいたい」というようなことを書いてフォローしていた。

私自身はこういう現代のポリティカル・コレクトネスに真っ向から逆らう言論は大好きなので全然気にならなかったが。

2007年3月8日

茨木晃 『スペイン史概説』 (あけぼの印刷社)

Filed under: スペイン — 万年初心者 @ 06:00

極端に入手しにくいものは書くべきではないかとも思うが、これは是非紹介したい。

以前記事にした林健太郎『昭和史と私』(文春文庫)の中の、「スペインの内乱について日本ではとかく左翼的立場から書かれた文献が多かったが、日本に帰化したスペインの歴史家茨木晃の『スペイン史概説』はこの事件を広い視野から総合的に観察して客観的な評価を与えている。」という文章でその存在を知る。

他の出版社から二訂版、三訂版も出ているようだ。

叙述の形式としてはごくオーソドックスなもので、洞窟絵画で有名なアルタミラの時代から20世紀の内戦までを、国王の統治を中心に記した簡略な通史で読みやすい。

しかし本書について何より特筆すべきなのは、その視点の類い稀なユニークさ。

「王権と教権の癒着と専制、異教徒への迫害と追放、異端審問、新大陸への侵略と先住民絶滅、中産階層の脆弱さと市民的自由の不在、全ヨーロッパでのプロテスタント弾圧、英仏蘭等との近代化競争からの決定的脱落、それらすべての挙句に“ファシスト・フランコ”という『絶対悪』が勝利した国」というスペインの歴史にべっとりと貼り付いたマイナス・イメージに保守的愛国主義の立場から逐一反論している。

ひねくれ者の私はこういう本が大好きである。

著者はスペインの独立と発展において王制と教会が果たした役割を何よりも高く評価する。

フェリペ2世死後から米西戦争に至る長い衰退期において、著者は絶対王政を目指す反動派をスペイン古来の身分制議会や地方共同体を否定する反伝統的な勢力と批判する一方、イギリス流の議会主義と無制限の言論の自由をそのまま機械的にスペインに移植しようとした進歩派も国民の分裂を煽っただけであったと強く非難する。

20世紀のスペイン内戦についての記述は他の時代よりも詳細で非常に参考になる。冒頭の林氏の評言が極めて適切であることがわかる。

内戦勃発前から左右両派によるテロが横行し、報復の悪循環の中で事態が悪化の一途を辿っていった過程が描かれる。

またフランコ側の残虐行為を無視しているわけではないが、人民戦線側が行った多数の赤色テロも記している。

そして悲惨な内乱の終了後、国民の傷と分裂を癒そうと最善の努力をした人物としてフランコを著者は極めて高く評価する。

また内戦に関する世界各国の書物において歴史の実状が歪められていると述べ、その例として以前紹介した『スペイン戦争』(中公文庫)の著者斉藤孝教授や、この分野でかなり有名と思われるヒュー・トマス『スペイン市民戦争』(みすず書房)を批判する。

さて、本書への個人的な評価を聞かれれば、本当に「素晴らしい」の一言に尽きる。

以上の下手な紹介では尽くせないほど多面的な視角を持つ書物である。

この本は今でも再版される価値がある。

どこか心ある出版社が版権を取って復刊してくれないだろうか。

どうかよろしくお願いします。

2006年11月22日

斉藤孝 『スペイン戦争』 (中公文庫)

Filed under: スペイン — 万年初心者 @ 06:07

スペイン内戦に関する啓蒙書としては一般的で手軽に読める本ではある。

だが肝心の内戦観、フランコ観は凡庸というか平板というか退屈である。

以前記事にした『フランコ スペイン現代史の迷路』が出た以上、本書の意義が相当薄れたことは否めない。

スペイン内戦の基礎知識は欲しいが、『フランコ~』は著者の歴史観が気になってどうしても読み通せないという人だけどうぞ。

2006年8月27日

色摩力夫 『フランコ スペイン現代史の迷路』 (中央公論新社)

Filed under: スペイン — 万年初心者 @ 07:35

一方的断罪論を排したフランコの伝記。

スペイン内戦の記述も人民戦線側に肩入れせず、客観的に書かれている。

20世紀初頭からフランコ死後の王政復古までかなり詳しく叙述されており、スペイン現代史のテキストとしては一番いいんじゃないでしょうか。

2006年7月27日

シュテファン・ツヴァイク 『マゼラン (附アメリゴ)』 (みすず書房)

Filed under: スペイン — 万年初心者 @ 19:10

ツヴァイクの伝記作品としては、『マリー・アントワネット』『ジョゼフ・フーシェ』『メリー・スチュアート』『エラスムスの勝利と悲劇』などがあるが、それらを一読した上で、一番面白いと思ったのがこれ。

マゼランの壮大で悲惨極まりない航海はただ事実を追っていくだけで強い感情をかき立てられる。

また時に詐欺師扱いすらされる「アメリカ命名者」アメリゴ・ヴェスプッチの生涯に迫った附属作も非常に興味深い。著者の解釈が今の学問水準でどう評価されるのかはわからないが、本作の謎解きは生半可な推理小説よりはるかに面白い。

両者とも再読に耐える名作と思う。

2006年7月25日

塩野七生 『レパントの海戦』 (新潮文庫)

Filed under: イタリア, スペイン — 万年初心者 @ 19:10

塩野氏の戦記三部作の最後。

教科書ではフェリペ2世治下のスペイン最盛期の事例として出てくる海戦だが、本書を読むと西欧側の戦いの主力はむしろヴェネツィア艦隊だったようだ。

これだけメジャーな事件を抜群に面白く再構成してくれているのだから、やはりこれは外せないでしょう。

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