万年初心者のための世界史ブックガイド

2018年10月8日

高坂正堯 『地球的視野で生きる  日本浮上論』 (実業之日本社)

Filed under: 史論・評論 — 万年初心者 @ 02:48

1975年刊。

これは高坂氏の著作でも、相当入手しにくいと思う。

没後出版された著作集にも未収録のはず(たぶん)。

私も今まで未読で、関連文献:高坂正堯の記事でも名を挙げてない。

第一次石油危機による高度経済成長の終焉と資源ナショナリズムの高揚、ヴェトナム戦争による国力低下に直面したアメリカが選択した米中接近と通貨切り下げという二つのニクソン・ショックと日米経済紛争の本格化、国際政治の多極化と普遍主義の退潮がもたらした各国の国益中心主義の台頭、にわかに経済的巨人となり急速に経済進出をしてきたことへの反発から生まれた東南アジア諸国の反日運動、と大きな対外的危機を抱えていた当時の日本への分析と対処法の模索の書。

資源が乏しく、対外貿易によって生きる、軽武装の「経済大国」(中級国家)としての日本が採るべき道は、他国の衰退産業等の国内事情と開発途上国の国益に配慮し、部分修正された上での自由貿易主義の維持発展を目指し、自発的にその為の負担を背負うこと、日米同盟が地域の安定要因になっていることを認めた上で中ソなど近隣諸国との関係改善を慎重に図ること、省資源型産業構造への転換を促進すること、積極的な文化交流を行い、その為の人材育成を目指すこと、などである。

高度成長期の極端な楽観論の裏返しで、(高坂氏が前者と共に批判したような)当時見られた終末論的悲観論は、日本についても、世界全体についても当たらなかった。

世界経済は混乱をどうにか乗り越え、日本の国力の絶頂は、むしろこの後、1980年代に来ることになった。

今世紀に入ってからの日本と世界の方が、本書が書かれた70年代よりも本格的な危機の時代とすら思える。

当時の状況をある程度理解しながら読めば、現在でも有益な点がある書物でしょう。

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