万年初心者のための世界史ブックガイド

2018年9月25日

Ts・バトバヤル 『モンゴル現代史』 (明石書店)

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20世紀モンゴル史の本。

清の統治下、その服属時期によって、内蒙古と外蒙古の区分が生まれる。

1911年辛亥革命で、ホトクト(ラマ教高位僧侶の号)を指導者に独立を宣言。

ロシアの支援で、中国宗主権の下、外モンゴルの自治権が認められる。

この法的に曖昧な半独立形態が第二次大戦まで尾を引き、中国は外モンゴルの独立をなかなか認めず、外モンゴルと中国領の内蒙古は現在も分離したままである。

ロシア革命が起こると、今度はロシアが無力化し、それに乗じて1919年中国は自治を取り消し。

さらにウンゲルン率いるロシア白衛軍が侵攻、中国軍を追い出し、居座る。

これに反抗する人々がモンゴル人民党を結成、ソヴィエト・ロシアに支援を求める。

1921年赤軍が侵攻、ホトクトを名目上立憲君主とした人民政府を樹立。

政府内穏健派は排除、処刑され、国防相スフバートルが台頭するが、23年病没、翌24年にホトクトが死去すると、モンゴル人民共和国建国を宣言、人民党は人民革命党に。

とは言え、独立性は極めて薄く、完全にソ連の衛星国状態。

第二次大戦後まで、ソ連以外の唯一の共産主義国とされるモンゴル人民共和国だが、実質的にはやはりソ連一国だけと言った方が適切かも。

中国での国共合作崩壊とスターリン独裁体制が確立した1928年以後、ソ連の指示で、仏教徒と封建諸侯の弾圧、伝統的集団牧民の財産没収が行われ、37年以降、ソ連と同様な大粛清が始まり、犠牲者が続出する。

その中で、チョイバルサンが指導者に就任、独裁権力を握り、スターリンに盲従。

この流れを見ていくと、中露の帝国主義を避ける為に、より過酷で残忍な赤色帝国主義の支配に飛び込んでしまった感がある。

ソ連軍が進駐、39年ノモンハン事件で日本軍と交戦、45年ソ連と共に対日宣戦。

1952年チョイバルサンが死去、後任のツェデンバルが、スターリン批判の余波を受けつつ、ライバルを打倒し、長期政権を維持。

このツェデンバル政権が、実に、1984年まで続く。

中ソ対立では、伝統的な中国への警戒意識から、完全にソ連寄りとなり、62年にはコメコンにも参加、大規模なソ連軍が国内に駐留し、ブレジネフ政権と緊密な関係を築く。

西側諸国とは、63年に英国と国交樹立、72年日中国交正常化と同年に日本とも外交関係樹立。

米国との関係はさらに遅れ、結局外交関係樹立は87年と、冷戦終結直前までかかった。

東欧共産圏崩壊と冷戦終結を受けて、1990年複数政党制へ移行、自由選挙で人民革命党員が大統領当選、96年選挙では政権交代が実現。

本書の刊行は2002年なので、それ以後のことは書かれていないが、別にフォローしなくてもいいでしょう。

第二部の日蒙関係の記述を除けば、100ページほどの小品に過ぎない本だが、モンゴルについて特段の興味と関心が無ければ、これくらいの分量の方がいいと思います。

それも、上でメモしたような、最低限のことだけ分かっていればいい。

憶えるべき人名は、チョイバルサンとツェデンバルだけ。

軽く流して、一般常識としての事項だけ身に付ければ十分。

類書として、このブログでは、はるか以前に田中克彦『草原の革命家たち』(中公新書)を紹介しているが、この分野で推奨するのは本書の方です。

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