万年初心者のための世界史ブックガイド

2018年9月8日

アレクサンドル・プーシキン 『大尉の娘』 (未知谷)

Filed under: ロシア, 文学 — 万年初心者 @ 06:38

高校生の頃、岩波文庫版を読んで以来、数十年振りの再読。

他社の翻訳が無いかなと探していたら、2013年にこれが出ていた。

しかし、元は1969年講談社版『世界文学全集』の中に収録されていたものを校訂したものだそうで、訳自体はそれほど新しくない。

200ページ余りの分量で、ストーリー展開が速く、読みやすい。

登場人物は皆精彩に富んで、生き生きしている。

プガチョフとエカチェリーナ2世という史上の著名人物の肖像も非常に興味深い。

 

面白い。

もの凄く面白い。

家庭小説としても歴史小説としても、最高の傑作だ。

通読難易度は著しく低いが、完成度は素晴らしい。

『青木世界史B講義の実況中継 5 文化史』で、著者が本書を皮切りに世界文学に耽溺するようになったと書かれているが、さもありなんという感じだ。

文学初心者の入門書としても良好。

決定稿からは外された補遺の章で、プーシキンは以下のように記している。

神よ願わくは、このロシヤ的反乱――不条理で無慈悲な――をもう見ることのないようにしてください。不可能な大変革をわが国で企てる人々は、年若くてわが国民を知らない連中か、あるいは自分の首を一コペイカぐらいに考え、他人の首なら四分の一コペイカぐらいに思っている残忍な連中なのである。

プーシキンは専制政治と農奴制への批判、デカブリストへの共感を咎められ、監視された謹慎生活を送っていた人だが、しかしこの文章は当局の検閲を意識したものというより、作家の本心からのものだと思える。

プーシキンの生きた時代から一世紀後、「不可能な大変革をわが国で企てる人々」が起こした「ロシヤ的反乱」によって、ロシアと世界はこの世の地獄に突き落とされた。

眼前に見る残酷な階級社会の不平等をそのまま肯定することなど出来るはずもないが、だからといって急進的な破壊運動がすべてを解決するという狂信に陥ってはならないことは、どんな社会においても肝に銘じるべき真理だと思う。

 

 

これは再読して正解だった。

素晴らしい作品。

私個人の仮想「世界文学全集」には必ず収録されるべきものと思えます。

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