万年初心者のための世界史ブックガイド

2018年8月2日

ベルトルト・ブレヒト 『ガリレオの生涯』 (光文社古典新訳文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 03:43

コペルニクスを継いで地動説を唱えたが、教会の圧力により自説を撤回したガリレオを描いた戯曲。

初版では、ガリレオの転向は秘かに学問研究を守り通すための妥協であったと肯定的に捉えられていたのが、広島・長崎への原爆投下後、科学の権力への屈従をより批判的に見る内容に変更されたという。

しかし、この作品に科学技術の進歩に対する根本的懐疑を読み取ることは難しかった。

科学的真理を抑圧しようとする教会など旧支配者と、それを利己的目的のために奉仕させようとする資本という新支配者への批判は見られても、そもそも人間に技術を制御するための倫理規範を主体的に作り出す能力が無いのではないか、との懐疑は見られない。

ブレヒトは、「人民の権力」が確立すればそれは可能になる、と考えていたのかもしれないが、その「人民の権力」が恐ろしいほど甚大な犠牲を出したのち崩壊したと思ったら、それに対抗する必要の無くなった大資本が思いつく限りの専横を尽くし、その弊害をほんのわずか抑えることすら出来ない、というのが現在の世界なわけです。

それを考えれば、社会の安定と人々の精神的秩序を維持する観点から、天動説を固守し、科学技術の進展自体に歯止めをかけようとしてガリレオを圧迫した教会の姿勢を、自らの特権維持を目論んだ頑迷固陋な醜行と片付けられるのか、極めて疑問に思う。

はっきり言ってしまうと、作品中、私はガリレオを迫害する側に共感を抱いてしまった。

少なくとも、能天気に技術進歩によるユートピアを信じるガリレオ自身や、それを物質的利害のために利用しようと煽る資本よりも、はるかに人間性の真実に沿っていると思えてくる。

こんな読み方をするのは私だけでしょうが、正直な感想は以上の通りです。

それと、巻末の著者年譜を見ていると、ブレヒトのナチスとの戦いに示された勇敢さは永遠に称えられるべき偉業であることは全く疑い得ないし、マッカーシズム時代のアメリカを批判的に見たことも当然だと思うが、しかし、1954年「スターリン国際平和賞受賞」というのは、この偉大な作家にとって名誉なことでは無いよなあと思ってしまう。

 

 

非常に良い。

いろいろなことを考えさせてくれる優れた作品。

初心者でも読みやすく、分かりやすい。

ブレヒトは『肝っ玉おっ母とその子供たち』と並んでこれを薦める。

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