万年初心者のための世界史ブックガイド

2018年7月13日

小川浩之 『英連邦  王冠への忠誠と自由な連合』 (中公叢書)

Filed under: イギリス — 万年初心者 @ 06:29

過去イギリスの植民地統治下にあった国々を中心にした、イギリス君主を象徴的首長として共有する国家間の自由な連合体としての英連邦の歴史を全般的に叙述した本。

本書刊行時の2012年において54ヵ国が加盟し、国連加盟国の28%を占める。

そのうち、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ジャマイカ、パプア・ニューギニアなどは今もイギリス君主を国家元首とする。

その他はインドを始めとして独自の大統領を選出する共和制国家が多いが、マレーシア、ブルネイ、トンガ、レソト、スワジランドなど世襲君主を持つ国もある。

連邦加盟国相互間では、大使ではなく高等弁務官が派遣され、外交業務を行っている。

1995年加盟のモザンビーク、2009年加盟のルワンダなど、歴史上イギリスおよび他の英連邦諸国との関係を持たない国も加わっている。

18世紀七年戦争およびフレンチ・インディアン戦争で、北米・インドにおいてフランスに決定的勝利を収めたイギリスは第一次帝国を確立。

それがアメリカ独立で破綻した後、19世紀インドを中心としてカナダ、オーストラリア、南アフリカ、東南アジアなどを含む第二次帝国形成。

アメリカ独立の教訓から、白人定着植民地では外交・防衛を除く内政的自治を容認する方針が立てられる。

まず1867年(日本では大政奉還の年だ)カナダ自治領が成立。

初代首相ジョン・マクドナルド。

少し間が空いて、1901年オーストラリア連邦成立。

初代首相エドモンド・バートン。

1907年ニュージーランド自治領成立。

初代首相ジョゼフ・ウォード。

ボーア戦争でイギリス支配地域が拡大した南アフリカでも、ボーア人との妥協によって1910年南アフリカ連邦成立。

初代首相ルイス・ボータ、二代目首相(こちらの方が有名か)ヤン・スマッツ。

第一次世界大戦時、これら自治領は「自動的交戦原則」により参戦国となる。

本国への支援によって発言権を強め、独自性を高める。

ヴェルサイユ条約、国際連盟にもイギリスと別個の形で加わる。

1922年長年の懸案であるアイルランド自治がともかくも実現し、自治領としてのアイルランド自由国成立。

漸進的・部分的自治の方針しか示されなかったインドではナショナリズム運動が高揚(英領インド帝国は単独で国際連盟に加盟している)。

自治領は独自の公使派遣、二国間条約締結など、事実上の国際法人格を獲得。

1926年帝国会議でバルフォア報告が採択され、それに基づき1931年ウェストミンスター憲章で英連邦成立、イギリス本国とカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アイルランド、ニューファンドランド(当時はカナダとは別の単独領)の六つの自治領で構成、一部の形式的条項を除いて本国と自治領の法的な対等性を確認。

世界恐慌襲来、32年オタワ会議で特恵関税圏とスターリング・ブロック形成。

第二次世界大戦では、英連邦各国が独自に対独宣戦を行う(アイルランド[当時はエールと国名変更]は中立維持)。

戦後、英統治下から独立した国のうち、イスラエル、ヨルダン、ビルマなどは英連邦に加盟しなかったが、インド、パキスタン、セイロンは加盟の意向を示す。

その際、1948年アトリー労働党政権により、「ブリティッシュ・コモンウェルス・オブ・ネイションズ」という正式名称から「ブリティッシュ」を削除することが定められ(これは意外な事実だが、日本語訳では慣用的に「英連邦」のままとなっている)、「自治領」という語も用いられなくなり、「コモンウェルス諸国」との呼び名が定着。

インドが英国王を元首とすることを止める共和制移行の意志を示すと大きな困難に直面したが、結局イギリス国王を「加盟国の自由な連合の象徴」とするという決定が行われ、50年の共和制化と総督廃止の後もインドは連邦残留。

この英・印両国の賢明な決定によって英連邦はその存在を維持。

(ただし49年、アルスター問題で反英感情が強いアイルランド共和国が初の英連邦脱退国となる。)

実現可能性はほぼ無かったが、フランスなど西欧諸国の加盟を検討する人々もいたし、吉田茂は日本の英連邦加盟を口にしたこともあるという。

スエズ戦争の失敗、イギリスのEEC加盟意向、スエズ以東からの英軍撤退方針などの動揺を経つつ、植民地独立の波が続き、遠心化の傾向を示しつつも英連邦は加盟国を増やし、「多人種の連合」としての面を持つようになる。

61年アパルトヘイト政策を続けて、加盟国から批判を受けていた南アフリカが共和国に移行し、英連邦も脱退(94年マンデラ政権下で復帰)。

第三次印パ戦争により72年バングラデシュ独立、その承認に抗議してパキスタンも英連邦脱退(89年復帰)。

ムガベ政権の強権化が目立つジンバブエは2003年に脱退。

このように脱退や加盟資格停止がありつつも、英連邦は現在も存続し、各国の緩やかな連合体として機能し続けている。

 

思えば、大日本帝国が同様に、悲惨な戦争を経て崩壊せずに、漸進的に「日本連邦」に進化出来なかったことは痛恨の極みです。

その場合、反英感情の強いアイルランドが英連邦から飛び出したように、再独立した韓国が加入する余地はなかったでしょうが、たとえ台湾、パラオ、マリアナ諸島、カロリン諸島、マーシャル諸島だけから成る小規模なものであっても、それらの国家が緩やかに連合した日本連邦を空想したくなります。

 

 

内容は相当充実している。

バランスの良い叙述で、様々な知識を得られる。

説明は丁寧かつ適切。

晦渋なところは無く、通読は容易。

良書として推薦します。

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