万年初心者のための世界史ブックガイド

2018年1月25日

高坂正堯 『政治的思考の復権』 (文芸春秋)

Filed under: 史論・評論 — 万年初心者 @ 03:23

この方の著作は、共著を除けば、ほとんど目を通しているが、これは未読だった。

古書店で偶然発見したので、読んでみる。

1972年1月刊の政治・外交評論集。

米中接近と通貨固定相場制放棄という二つのニクソン・ショックが日本に大きな衝撃を与えていた頃。

そして、翌年の石油ショックで高度経済成長が終焉する直前の時期。

まず、三島由紀夫の自殺事件を取り上げて時代の精神状況を分析、そこから外交論に移って、米国の国力衰退に伴う日米関係の軋轢、米ソ二大超大国と「半極」的存在の中国、そして経済大国でありながら政治・軍事的には小国である日本という四ヵ国が織りなすアジアの政治構造、西側同盟の基礎を再確認しつつ東側諸国との交流拡大に乗り出した西ドイツの東方外交を論じる。

多極化(多角的バランス)時代に入った世界で、明白な経済大国となった日本が権力政治から棄権することは不可能であることを認識し、日米同盟を政治的安定の為の資産として維持しつつ、他国に配慮した慎重で自制的な自由貿易政策を実施し、同じ中級国家としてのヨーロッパと日本の連携を深めることを主張。

内政面では、米国占領時代において、「押しつけ」とも「自発的」とも言えない(あるいはその両側面を持つ)大きな改革が遂行されたが、それが圧倒的な占領軍の権力によって行われたことを直視しないことによって、戦後日本における「力の無視」という精神的欠陥がもたらされたことを指摘。

政治が介入してよい領域、および政治によって可能なこと、それぞれの限界をしっかりと認識しつつ、過剰な正邪意識とユートピア的思考や成り行き任せで行動することを避け、自由闊達な議論による選択の多様性と妥協に基づく、真の「政治的思考」を復権させることを説いている。

 

 

やはり十分有益な書物であった。

保革のイデオロギー対立の嵐の中で、何とか冷静で実りある議論を展開しようとした著者の真摯な姿勢に心を打たれる。

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