万年初心者のための世界史ブックガイド

2018年1月5日

ウィリアム・シェイクスピア 『ヘンリー六世 全三部』 (ちくま文庫)

Filed under: イギリス, 文学 — 万年初心者 @ 02:19

この本では、シェイクスピア史劇の大作を一巻本にして収録してある。

百年戦争をイギリス優位に導き、英仏両王国を統合するかとすら思われたランカスター朝の名君ヘンリ5世が急逝、幼少のヘンリ6世が即位したことから、イングランド王国の歯車が狂い出す。

王の叔父(ヘンリ5世の兄弟)グロスター公ハンフリー、ベッドフォード公ジョンと、王の大叔父(ヘンリ4世の異母弟)ウィンチェスター司教およびその甥サマセット公のボーフォート家一族との対立が激化。

さらにヘンリ6世の妃でフランス王家出身のマーガレットとその協力者サフォーク公、ヘンリ4世の父ジョン・オヴ・ゴーント(ランカスター家の祖)の兄弟エドマンド・オヴ・ラングレーから発する、孫のヨーク公リチャード(とその子で後に王位に就くエドワード4世、リチャード3世)、ヨーク家派の最有力貴族ながら後にランカスター派に転ずる「キング・メイカー」ウォリック伯リチャード・ネヴィルなどが入り乱れて、国家はバラ戦争という内乱の泥沼に沈んでいく。

他に背景として、仏王シャルル7世とジャンヌ・ダルク、ワット・タイラーの再来のような反乱者ジャック・ケイドなどが登場。

ジャンヌ・ダルクの扱いには相当の国民的偏見が感じられないこともないが、まあこの辺で収まっていれば、まだマシな方か。

シェイクスピア史劇については「史実に忠実でもないし、さして面白くもない」という批評があるようだが、私は必ずしもそうは思わない。

史上の著名人物が発する生き生きとした台詞回しを楽しみながら、歴史の流れが無理なく頭に入るようになっており、初心者には十分有益である。

史実との乖離も、本書の訳注で頻繁に触れられているが、はっきり言ってこの時代のイギリス史にさしたる予備知識がない日本人読者が気にするようなレベルではない。

戯曲にしては相当長大な作品なので読むのを躊躇していたが、本書も十分面白く、効用も高かった。

初心者でも取り組んでみることをお薦めします。

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