万年初心者のための世界史ブックガイド

2017年12月23日

中嶋嶺雄 『国際関係論  同時代史への羅針盤』 (中公新書)

Filed under: 国際関係・外交 — 万年初心者 @ 05:21

1992年刊。

以前この記事で書名だけは触れている。

著者は戦後を代表する現実主義的な中国研究者の一人。

私が若い頃、左派偏向的な中国研究、国際政治学が跋扈する中、最も信頼できる中国政治研究者と考えており、その著の『中国  歴史・社会・国際関係』(中公新書)は、初心者が中国現代史を学ぶ上での基本テキストとして個人的には扱っていた。

ただ、その最晩年は過去の反動として世間に表れてきた反中感情に迎合するような面が見られ、あまり好い印象を持っていなかったことも事実である。

 

 

本書では、まず国際関係論という学問の概要から始め、それが政治学の延長線上の国際政治学ではなく、社会科学諸部門の総合という存在であることを述べ、政治学・経済学・社会学・歴史学・人類学などディシプリン(専門的学問領域)を複数習得する必要性を提示。

私は研究者でも何でもなく、ただの一般読者だが、私の関心の中心にはやはり歴史(政治史)があって、その脇に外交・国際関係と政治思想があり、背景に文学が隠れているといったところでしょうか。

次いで、国際関係論という学問分野の展開について、カー、シューマン、モーゲンソー、ケナン、レイモン・アロン、スタンレー・ホフマン、ケネス・ウォルツ、ギャディス、ナイなどの学者名を挙げながら概観。

地域研究の紹介を挟んで、戦後国際政治史を簡単に概観する具体的歴史叙述が置かれ、次に米・中・ソ・欧・アジア相互の国際関係の断片を扱った章、社会主義と民族紛争を述べた章が続く。

そして、外交に一章を割り当てる。

ここでは、条約・協約・協定・交換公文・議定書・議事録・共同宣言(共同声明)という外交交渉の公約化の形式について少し注意を払っておく。

終章では、国際関係上の倫理、および21世紀に向けた展望を語っている。

 

 

以上が本文ですが、正直精読する必要は無く、興味のあるポイントを押さえるだけでいいかもしれない。

私もそうした。

だが、本書を最も価値あらしめているものが、末尾に付せられている。

「国際関係論基礎文献」と題された読書案内の付録である。

必読書30点を含む多くの書名が挙げられている。

以下、分野ごとにその必読書30点のみを引用してみる。

 

 

≪政治≫

バーナード・クリック『政治の弁証』

ハンナ・アレント『革命について』

レーデラー『大衆の国家』

オルテガ『大衆の反逆』

 

 

≪国際関係論・国際政治学・外交≫

E・H・カー『危機の二十年』

ニコルソン『外交』

A・J・P・テイラー『第二次世界大戦の起源』

アリソン『決定の本質』

永井陽之助『平和の代償』

清水幾太郎『現代思想』

川田侃『国際関係概論』

永井陽之助『冷戦の起源』

中嶋嶺雄『中ソ対立と現代』

 

 

≪地域研究全般≫

中嶋嶺雄 チャルマーズ・ジョンソン『地域研究の現在』

青木保『文化の否定性』

梶田孝道『エスニシティと社会変動』

梅棹忠夫『文明の生態史観』

中根千枝『社会人類学』

 

 

≪アメリカ≫

トクヴィル『アメリカの民主政治』

ケナン『アメリカ外交五十年』

アーネスト・メイ『歴史の教訓』

 

 

≪ヨーロッパ≫

高坂正堯『古典外交の成熟と崩壊』

 

 

≪ソ連・ロシア・東欧・中近東≫

E・フロム『人間の勝利を求めて』

エレーヌ・カレール・ダンコース『崩壊した帝国』

山内昌之『ラディカル・ヒストリー』

 

 

≪アジア・中国≫

信夫清三郎『朝鮮戦争の勃発』

神谷不二『朝鮮戦争』

フェアバンク『中国』

中嶋嶺雄『現代中国論』

中嶋嶺雄『香港 移りゆく都市国家』

 

 

 

あくまで本書刊行時のものであり、今から見ると古くて入れ替えた方がいいような本もあるが、以上で書き写さなかった書名も含めて、一応の参考にはなる。

本文は特に素晴らしいと言うほどでもないが、末尾の読書案内は出色のもの。

古書店で見かけたら、買って手元に置いて、時々眺めることで読書意欲を高めるのも良い。

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