万年初心者のための世界史ブックガイド

2017年11月28日

桑原武夫 監修 『西洋文学事典』 (ちくま学芸文庫)

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1954年福音館書店から出版された文学事典を2012年復刻文庫化したもの。

巻末の沼野充義氏の解説によると、本書の特徴として、

(1)当時の常識に従い、「西洋文学」=「世界文学」として捉えられていること

(2)重点を近現代、特に20世紀に置く、革新的方針を採っていること(刊行当時はカミュもヘミングウェイも存命中の同時代作家だった)

(3)作家事典だけでなく、作品事典も兼ねており、あらすじと鑑賞について、明快で説得力のある記述が盛り込まれていること

(4)記述スタイルに明快さと一貫性があること

(5)当時の「カノン(正典)」に縛られた側面(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ文学の欠如)と当時としては斬新な側面の両方があること

が挙げられている。

このうち、沼野氏は(3)の作品解説が本書最大の「売り」になっていると書いているが、私も同感です。

簡潔ながら要領が良く、未読作品の場合、読書意欲をかき立て、既読作品の場合でも、鑑賞・評価を再考させてくれる。

もちろん、刊行が古い分、首を傾げる記述もある。

例えば、ゴーリキーの項などは、時代背景を考慮しても、ちょっと眩暈がしてくる代物ではある。

また戦後間もなくの漢字制限・簡略化の風潮からか、「ヒニク」「タイハイ」「ドレイ」「ガイセン」「ダラク」「ボクトツ」「ギセイ」など、妙なカタカナ表記が散見される。

そうした瑕疵はありつつも、文学初心者にとっては、貴重で有益なツールとして今でも通用する本だと思われる。

大部の文学事典などを買うのは躊躇するが、コンパクトなこれなら、買って手元に置いておいても良い。

一度手に取ることをお勧めします。

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