万年初心者のための世界史ブックガイド

2017年8月8日

サマセット・モーム 『読書案内  世界文学』 (岩波文庫)

Filed under: 読書論, 文学 — 万年初心者 @ 03:58

モームが1940年に出した短いエッセイの翻訳。

最初岩波新書で出て、その後文庫入り。

イギリス文学、ヨーロッパ文学、アメリカ文学の三部構成。

 

まず「はしがき」で、楽しく読める作品を選んだ、文学史上、研究者や批評家にとっていかに重要でも、今日ではもう読む必要の無い書物はたくさんある、ただし「楽しく読める」と言っても、注意力や想像力を働かせることはもちろん必要だ、と述べている。

 

 

第一部イギリス文学。

読書は楽しくあらねばならないという主張。

ところで、だれにせよ、楽しみは不道徳なものだと考えてはならない。楽しみそれ自体は、大きな善である。すべての楽しみがそうなのである。ただ、それからおこる結果を考え、思慮深いひとはある種の楽しみを避けようとする。また、楽しみはすべて下品で官能的であるとはかぎらない。知的な楽しみほど、長持ちがし、また満足がえられる楽しみはほかにないことを悟った者は、英知にとんだひとだといえよう。読書の習慣を身につけるがよい。人生の盛りをすぎてから、それをこころみて、しかも満足のえられるスポーツといっては、読書をおいてそうたくさんはない。トランプの独り占い、詰将棋、クロスワード・パズルをのぞいて、読書のように、相手がなくても楽しめる遊びはほかに何もない。読書には、ほかのスポーツや遊びに見られる不都合は、少しもない。いつでも気の向いたときにはじめ、好きなだけつづけ、他の用事がおこったら、直ちにやめることのできる仕事は、ただ読書だけである。あるいは針仕事がそうであるかもしれない。だが、この針仕事という奴は、手先ばかりはたらいて、落着きのない精神のほうはさらに束縛をうけない。公共図書館が利用でき、廉価版が手にはいる、今日のようなめぐまれた時代に、読書くらい、わずかな元手で楽しめる娯楽はほかにない。読書の習慣を身につけることは、人生のほとんどすべての不幸からあなたを守る、避難所ができることである。いまわたくしは、「ほとんどすべての」といったが、それは、書物をよめば、飢えの苦しみがいやされるとか、失恋の悲しみを忘れるとか、そこまでは主張しようと思わないからである。もっともよみごたえのある探偵小説五、六冊と、それに湯たんぽの用意がありさえすれば、どんな悪性の鼻かぜにかかっても、わたくしたちは、鼻かぜくらいなんだといって、平然としていることができるだろう。だが、もし退屈な書物までもよめというのであると、読書のための読書の習慣など、はたしてだれが身につけようとするであろうか。

 

以下、取り上げられている作品。

デフォー『モル・フランダーズ』

スウィフト『ガリヴァー旅行記』

フィールディング『トム・ジョーンズ』

スターン『トリストラム・シャンディー』

ボズウェル『サミュエル・ジョンソン伝』

ジョンソン『詩人伝』

ギボン『自叙伝』

ディケンズ『デイヴィッド・コパーフィールド』

バトラー『万人の道』

オースティン『マンスフィールド・パーク』

ハズリット『卓上閑話』

サッカレー『虚栄の市』

エミリー・ブロンテ『嵐が丘』

あと、詩人選に加え、もちろんシェイクスピアの偉大な悲劇を読まねばならない、として終えている。

自国文学だけあって、ここでは、一般の日本人にはあまり馴染みの無い作品がいくつか挙げられている。

 

 

 

第二部ヨーロッパ文学。

セルバンテス『ドン・キホーテ』

(なお、この作品中の挿話を、「ミルトンの『失楽園』をよんだジョンソン博士と同様、楽しんでというよりは、むしろ義務の気持からよんだ」と書かれている。同国人の著名文士にしてそうなのだから、やはり『失楽園』は、特に文学好きでもない普通の日本人読者が無理して読むようなものではない、と改めて思った。)

モンテーニュ『エセー』(特に第三巻)

ゲーテ『ヴィルヘルム・マイステルの徒弟(修行)時代』

ツルゲーネフ『父と子』

トルストイ『戦争と平和』

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』

ラ・ファイエット夫人『クレーヴの奥方』

プレヴォー『マノン・レスコー』

ヴォルテール『カンディード』

ルソー『懺悔録(告白)』

バルザック『ゴリオ爺さん』

スタンダール『赤と黒』『パルムの僧院』

フローベール『ボヴァリー夫人』

コンスタン『アドルフ』

デュマ『三銃士』

アナトール・フランス『螺鈿の手箱』(短篇集)

プルースト『失われた時を求めて』

 

 

 

第三部アメリカ文学。

フランクリン『自叙伝』

ホーソーン『緋文字』

ソーロー『ウォールデン』

エマソン『エセイ集』

エドガー・アラン・ポー『黄金虫』などの短篇小説集

ヘンリー・ジェイムズ『アメリカ人』

メルヴィル『モービー・ディック(白鯨)』

マーク・トウェイン『ハックルベリ・フィン』

パークマン『オレゴン街道』

ディキンソンの詩

ホイットマン『草の葉』

パークマンやディキンソンなんて名前は聞いたこともない。

それ以外は定番の著者が並んでます。

 

 

 

なお本書の付録で触れられているように、モームは『世界の十大小説』という本も書いていて、これも岩波文庫に収録されているが、その10作品は以下の通りである。

バルザック『ゴリオ爺さん』

フィールディング『トム・ジョーンズ』

ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』

トルストイ『戦争と平和』

メルヴィル『白鯨』

エミリー・ブロンテ『嵐が丘』

スタンダール『赤と黒』

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』

フローベール『ボヴァリー夫人』

オースティン『高慢と偏見』

私は、一応8冊は読んでますね。

 

 

 

文学専門家や研究者でもない、普通の日本人読者からすると、ちょっと知名度が無さ過ぎる本が紹介されているところもあるが、たまに手に取って読書意欲をかき立てるのには役立つ本。

ここに載せられている作品を最優先に読む、というのでもいいでしょう。

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