万年初心者のための世界史ブックガイド

2017年7月28日

チャールズ・キンドルバーガー 『経済大国興亡史  1500-1990 上・下』 (岩波書店)

Filed under: 近現代概説 — 万年初心者 @ 02:00

この記事で触れたが、著名な経済学者としてキンドルバーガーの名前は以前から知っていた。

『大不況下の世界』は現在も未読だが、本書を読んだ。

これもかなり以前から気にはなっていた本ではある。

原著は1996年刊、翻訳は2002年刊。

最初に、「国家のライフ・サイクル」「覇権理論」「中心・周辺理論」等々の妥当性・有効性について検討。

それほど難しい話でもないが、まあこんな考え方があるのか、くらいで軽く流せばよい。

その後、(ヴェネツィアを中心にフィレンツェ、ジェノヴァ、ミラノを含む)イタリア都市国家、ポルトガル、スペイン、(ブリュージュ、アントウェルペン、およびアムステルダムを中心とするオランダを含む)ネーデルラント、フランス、イギリス、ドイツ、アメリカ、日本、と近世以降の世界で興隆し、経済的首位に向かった大国の経済を描写していく。

なお、以前記事で書いた近世ヨーロッパの政治・経済の主要国興亡見取り図は、必ず頭に即浮かぶようにしておくこと。

優位を占めた国は、15世紀以前がイタリア、16世紀が(ポルトガルと)スペイン、17世紀がオランダ(後半は、経済的には疑問が残るものの、フランス)、18世紀および19世紀がイギリス、20世紀がアメリカ。

で、各国の全盛期を過ぎても、その国が瞬く間に衰退したのではないことはイメージしておく。

例えば、本書ではオランダの完全な没落は、17世紀後半の三度の英蘭戦争とルイ14世のオランダ戦争ではなく、1780~84年の「第四次英蘭戦争」(高校世界史の範囲外なのでぴんとこないが、これは年代からいってアメリカ独立戦争に伴う戦いか?)およびフランス革命戦争での占領後とされている。

フランス、ドイツ、日本は経済的首位に到達したことはなく、フランスは(一度切りの)長期的な興隆と衰退を経たのではなく、政治的変動と指導層の新旧交代によって何回かの盛衰を繰り返した「永遠の挑戦者」の地位にある、とされている。

国家の衰亡においては、その経済が貿易・工業から金融を中心とするものに変質し、産業構造が硬直化し、所得分配が歪められ貧富の差が拡大し、不道徳な誇示的消費と貧困が同時に広まる、というのが典型的パターン。

著者は、同時代のアメリカもその弊に陥っているとしているが、その後のアメリカは自身の悪しき金融資本主義を開き直って全世界に拡大し、表面上の経済的地位回復を果たしたが、それがリーマン・ショック以後の危機をもたらしたのは周知の通り。

本書では、日本はバブルが弾けたとは言え、依然強力な経済大国で、アメリカを継いで経済首位国となる可能性を持つ存在とされており(ただし著者はそれに懐疑的ではある)、中国をはじめとする新興国の台頭については、基本ほとんど触れられていない。

刊行年代を考えれば当然ですが、何か懐かしさを感じる記述ではありました。

「系列」(これも懐かしい言葉だ)や独特の商慣行という非関税障壁を中心とする閉鎖性や「日本異質論」に基づく対日批判が溢れていた時期ですね。

実際、それらの批判は理不尽・不公平なことが多く、不愉快なことが多かったし、そして我々自身も今振り返ってみれば、少々傲慢なところがあったことは間違いないでしょう。

そう考えれば、バブル景気のような時期が続かなかったことを嘆く一方なのも、おかしいかと感じます。

 

 

思ったよりも相当読みやすかった。

期待していたほどの重厚な内容では無かったが、とっつきやすい。

難解な概念も、理解しがたい数式も、やたら細かい統計数字も、ほぼ出てこない。

一般的な叙述という形式を守っている。

経済史は苦手分野もいいところだが、こういう本なら読める。

普通にお薦めできる良書です。

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