万年初心者のための世界史ブックガイド

2017年6月18日

ダンテ・アリギエリ 『神曲  地獄篇』 (講談社学術文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 01:22

誰もが知っている世界文学の名作だが、詩ということもあり、手に取るつもりも全く無く、最近まで放置していた。

だがたまたまこの版が目に入ったので、「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」のうち、最初だけ読むことにしました。

内容は周知の通り。

ダンテが古代ローマ最高の詩人ウェルギリウスに導かれて、死後の世界を訪れるという設定の詩。

翻訳が新しく、詳細な註が同ページに置かれていることもあって、この版でならすらすら普通に読める。

地獄の第一層では、現世で罪を犯さずに死んだが、洗礼を受けていないために天国に行けなかった乳幼児と、ソクラテスやプラトンなど、キリスト教誕生以前に世を去った哲人が存在しているが、さらに下の階層に行くに従って、歴史上の著名人物や、ダンテと同時代の教皇・聖職者・統治者・市民などがその犯した罪に応じて苦しみを受ける姿が、様々に描写されている。

その叙述は、まあ全く面白くないこともない。

私は、モンタネッリ『ルネサンスの歴史』上巻を読んで、ダンテの政治的立場は当時のイタリアでの皇帝党(ギベリン)だと考えていたが、本書の解説によると、そう単純なものでもないようだ。

そもそもフィレンツェが教皇党(ゲルフ)優位の状況となり、1300年頃その教皇党内部で、大銀行家など都市貴族を中心とする黒派と職人・小市民・農民層を中心とする白派が分裂し、ダンテは白派の中の穏健派に属するとのこと。

市政に関わったダンテは、黒白両派の調停を試みたが、教皇庁の支持を得た黒派のクーデタでダンテは追放・亡命、しばらく白派亡命勢力と行動を共にするが、やがてそれとも袂を分かったという。

よって、この『地獄篇』では、当時の教皇ボニファティウス8世が地獄に落とされているし、ダンテは教皇の世俗権を一切認めず、ルクセンブルク朝皇帝のハインリヒ7世に捧げた『帝政論』という著作も残している。

 

 

散文調の訳なので、普通には読める。

だが『煉獄篇』『天国篇』を続けて読む気には、やはりなれない。

私レベルではこの一冊で十分でしょう。

ちょうど三篇にきっちり分かれていることだし、その内の一つを選んでも恣意的とは言えんでしょう。

内容的には、私がどうこう言えることは無いが、やはりどんな宗教でも「死後の裁き」という観念は重要だとは感じた。

この世だけじゃ、どうしたって帳尻の合わないことってありますから。

現世でどれほど驕り高ぶり、好き放題している連中がいても、死だけは誰にも平等に訪れる。

今の「自由社会」の卑しい支配者も、何時かはそれを思い知ることになるでしょう。

 

著名古典では初心者が読めない部類に入る本だと思い込んでいたが、少なくともこの一部だけなら通読可能。

知的見栄のためだけでも読んでおいて良い。

ただ、末尾で訳者も触れているが、岩波文庫の文語調の訳だと挫折する可能性が極めて高いので、本書か河出文庫収録の版を用いるのが無難だと思います。

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