万年初心者のための世界史ブックガイド

2017年5月14日

セルバンテス 『ドン・キホーテ 後篇 全3巻』 (岩波文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 00:26

前篇の読後感が非常に良かったので、この後篇にも取り組んだ。

同様に大変素晴らしい。

ドン・キホーテと従士サンチョ・パンサの軽妙なやり取りが実に面白い。

妄想に駆られて始終滑稽な振る舞いをするドン・キホーテが、しばしば機知と良識に満ちた言動も見せる。

なお、この後篇の中では、出版された前篇が読まれているというメタフィクション的設定になっており、当時実際に出回った贋作まで登場している。

物語自体も実に楽しい。

前篇を読んでドン・キホーテを知った、いたずら好きの公爵夫妻が、ドン・キホーテ主従を招き、「ドゥルシネーア姫」(実際には粗野な田舎娘)にかけられた魔法を解くためサンチョに鞭打ちを加えないといけないと思い込ませる話や、公爵に言い含められた侍女の一人がドン・キホーテに恋焦がれた振りをするが、ドン・キホーテがどこまでもそれを真に受けて「ドゥルシネーア姫」への操を立てていい気になるのに腹を立てて、しまいに侍女が罵倒の限りを尽くすところなどは、思わず吹き出してしまう。

最後のやや哀感に満ちた場面を読み終えると、欲得ずくの世の中で、滑稽ではあってもある種のすでに失われた理想を貫こうとした主人公の生き方が尊いものに思えてくる。

翻訳が流暢なこともあって、驚くほど容易に通読できる。

知名度と文学的価値、面白さと読みやすさの四者をすべて兼ね備えた稀有な古典。

真の傑作だ。

前後篇合わせて全6巻と相当の長さだが、この作品に関しては苦にならない。

是非とも薦める。

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