J・M・ロバーツ『図説世界の歴史 1 「歴史の始まり」と古代文明』(創元社) 3 易
J・M・ロバーツ『図説世界の歴史 2 古代ギリシアとアジアの文明』(創元社) 4 易
J・M・ロバーツ『図説世界の歴史 3 古代ローマとキリスト教』(創元社) 3 易
J・M・ロバーツ『図説世界の歴史 4 ビザンツ帝国とイスラーム文明』(創元社) 5 易
J・M・ロバーツ『図説世界の歴史 5 東アジアと中世ヨーロッパ』(創元社) 5 易
J・M・ロバーツ『図説世界の歴史 6 近代ヨーロッパ文明の成立』(創元社) 3 易
J・M・ロバーツ『図説世界の歴史 7 革命の時代』(創元社) 4 易
J・M・ロバーツ『図説世界の歴史 8 帝国の時代』(創元社) 3 易
J・M・ロバーツ『図説世界の歴史 9 第二次世界大戦と戦後の世界』(創元社) 3 易
J・M・ロバーツ『図説世界の歴史 10 新たなる世界秩序を求めて』(創元社) 3 易
この日本語版の刊行は比較的新しい。
タイトルに「図説」と付くだけあって、写真や図表が極めて多く掲載されている。
しかもオールカラーなので、見やすく美しい。
もっとも、その分紙質も厚くて重いし、本文が始終分断される感もあって、やや読みにくさもあるが。
全集の形式ではあるが、全10巻と巻数は相当少な目。
しかも1巻ごとの文章量も大したことはないので、通読難易度は著しく低い。
各巻の日本語版監修者も、著名な学者が顔を揃えており、信頼できる。
翻訳も極めて良好。
特に「です・ます」調を採用したことは、大成功。
非常に読みやすく、説得力のある文体に仕上がっている。
内容的には、一人の著者による執筆ということもあってか、一貫した史観が感じられる。
「多くの人びとに重大な影響を与えた思想・出来事・人物」のみを重視し、それに適合しない史実は思い切って省略(ただし図表の解説文などで補足している。よってそこも読み飛ばさない方が良い)。
オリエント文明およびそれから分岐したヨーロッパ文明とイスラム文明を最重視し、それらから独自性を守ったインド文明と中国文明に一定の評価を与えつつ、アフリカおよびアメリカの文明に対する評価は低い。
昔ながらの西欧中心主義からは脱しつつ、それでもギリシア文明からヨーロッパ文明に受け継がれてきた流れを人類の歴史の中で極めて特異で価値のあるものであると評価する。
その筆致があまりに冷静で説得的なので、ほとんど反発も感じない。
凡庸な学者が、もし同じ巻数で世界史を記述しても、毒にも薬にもならない平板な著名史実の羅列に終わるだけでしょう。
しかし、このシリーズは、一見平凡な叙述を続けているように見えて、各巻の中に必ず数箇所、はっとさせられる著者独自の見解が含まれており、知的興奮が得られる(記事中でも、そうした部分を引用したつもりです)。
決してありきたりで内容の粗い通史に終わっていません。
本文中での事実関係の扱いが薄い部分は、上記のように図表とその解説でカバーしていて、網羅性もある程度確保している。
ただ、平易極まりない叙述とは言え、世界史について全く白紙の読者が読んだとして、どれだけ印象に残るかはやや心許ないかもしれない。
漫然と読むのではなく、記事中で引用したような部分を含むポイントをしっかりと把握することが必要になるでしょう。
(もちろん、私と全く同じ感じ取り方をする必要は毛頭ありませんが。)
通読した結果、十分お薦めできるシリーズだと確信しました。