万年初心者のための世界史ブックガイド

2016年7月24日

トルストイ 『光あるうちに光の中を歩め』 (岩波文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 04:13

2世紀ローマ帝国治下、小アジアのキリキアを舞台にした、富裕な商人の息子ユリウスとその親友である解放奴隷の息子パンフィリウスの物語。

原始キリスト教を奉じるパンフィリウスと、それに魅かれながら世俗の論理に何度も押し留められるユリウスとの対話が主な内容。

最後にユリウスはすべてを投げ打ってキリスト教徒の共同体に参加することになるのだが、キリスト教的理想主義に対比される世俗的現実主義にもかなりの言い分を感じてしまう。

実際、この作品は作者の意図とは逆に、世俗的現実主義を主張する言葉に多くのページが費やされ説得力が感じられてしまうとして、トルストイ自身はお蔵入りにしようとしたという。

本当は理想と現実の双方を踏まえて、よりよき均衡を取ろうとするのが正しいんでしょうけどね。

理想主義一本槍のトルストイ主義にもついていけないが、かと言ってただのエゴイズムと物質主義を自由と効率の名の下に肯定するしか能がない現代社会は全くもって醜悪です。

原始キリスト教から進化したローマ・カトリックや(トルストイが強く批判した)ロシア正教会のような伝統的宗教は、実はそうした理想と現実のバランスを達成するために長い年月をかけて生まれたものであり、腐敗や形式主義など、たとえどれほどの表面的欠陥があろうとも、やはり基本的には守るべきものなんではないか、と思えてくる。

トルストイのように原始キリスト教のみを理想視するのはどうかと・・・・・。

 

短い上に読みやすく面白い。

良き佳作。

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