万年初心者のための世界史ブックガイド

2016年3月26日

文芸春秋「大世界史」について

Filed under: おしらせ・雑記, 全集 — 万年初心者 @ 07:22

三笠宮崇仁 『1 ここに歴史はじまる』  3 易

村川堅太郎 『2 古典古代の市民たち』

植村清二  『3 万里の長城』

石田幹之助 『4 大唐の春』

井上光貞  『5 日本の登場』

中村元   『6 ガンジスと三日月』

堀米庸三  『7 中世の光と影』  2 易

村上正二  『8 蒼き狼の国』

護雅夫   『9 絹の道と香料の島』

西村貞二  『10 神の国から地上の国へ』

神田信夫  『11 紫禁城の栄光』  4 易

石田一良  『12 日本の開花』

成瀬治   『13 朕は国家なり』

柴田三千雄 『14 革命と皇帝』

鳥山成人  『15 スラヴの発展』

尾藤正英  『16 閉ざされた日本』

矢田俊隆  『17 自由と統一をめざして』  2 易

中屋健一  『18 偉大なるフロンティア』

尾鍋輝彦  『19 カイゼルの髭』  2 易

衛藤瀋吉  『20 眠れる獅子』  4 易

芳賀徹   『21 明治百年の序幕』

林健太郎  『22 二つの大戦の谷間』  5 易

鳥海靖   『23 祖父と父の日本』

野田宣雄  『24 独裁者の道』(文庫改題『ヒトラーの時代』  5 易

猪木正道  『25 冷戦と共存』  5 易

高坂正堯  『26 一億の日本人』  4 易

 

(3巻『万里の長城』は同著者同書名の著作を記事にしているが、このシリーズとは別の本のはず。)

 

刊行年代は河出版とほぼ同じ1960年代末。

このシリーズにおける、表面的な最大の特徴は日本史の巻があること。

日本史を世界史の一部として理解するという、現在にも通じる考え方の先駆と言えるのかもしれないが、正直その弊害も大きいと感じる。

全巻数がさほど多いとは言えないのに、日本史にまで巻を割いたものだから、地域的配分は昔ながらの「東洋史プラス西洋史」に先祖帰りした観がある。

さらに各巻のページ数も決して多くはないので、叙述形式は概ね物語風だが、エピソードや逸話の類が特に豊富なわけでもない。

例えば、7巻の中世ヨーロッパ史などは理屈っぽい話が多く、同じ堀米氏執筆の中公旧版の巻と比べれば、その違いは一目瞭然である。

11巻は結構面白かったが、それは北アジア史の叙述に関してで、本題の中国史はごくありきたりの概説にしか思えなかった。

では、このシリーズには全く取るべき点が無いのかというと、それは全然違う。

私にとって、この「大世界史」シリーズの最大の長所は「現代史執筆陣の圧倒的な素晴らしさ」。

それに尽きる。

衛藤瀋吉、林健太郎、野田宣雄、猪木正道、高坂正堯の諸氏の名前が、本当に輝いて見える。

20巻の東アジア現代史、22巻・24巻の現代史概説、25巻の戦後国際政治史、26巻の戦後日本史、どれもやや古びてはいるが、現在でもそれぞれの分野の基本書として読む価値があるものばかりである。

60年代末、左翼的反体制運動が跋扈していた時期に、これだけ冷静な執筆陣を揃えた出版社の心意気を感じる(現在のように醜い衆愚どもが「右派・愛国的」言説をかつての左翼と同じように喚き立てているのとは全く状況が違う)。

あくまで現代史に限られ、近代史においてはさしたる利点を感じることは無いものの、私としては世界史全集を基本書とする場合、「近代までは中公旧版、現代史は文春大世界史」と薦めたいです。

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