万年初心者のための世界史ブックガイド

2016年3月14日

サッカリー 『虚栄の市 全4巻』 (岩波文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 05:02

19世紀初頭、イギリス上流社会の貴族とブルジョワを鋭い風刺精神で描いた写実主義文学の傑作。

教科書的な知名度は高いが、各種文学全集への収録は少なめか。

低い身分に生まれながら、美貌と才気で世間でのし上がろうとする悪女ベッキー・シャープと、貞淑で心優しい美女アミーリア・セドリ、アミーリアを見守り続ける質朴・誠実なウィリアム・ドビンの三者を中心に物語は展開していく。

ベッキー(レベッカ)は家庭教師として、雇い主のクローリー准男爵一家に入り込み上流社会に乗り出していき、アミーリアは実家を襲った苦難に耐え、婚約者のジョージ・オズボーンと結ばれるが、ワーテルローの戦いに巻き込まれ、さらなる悲劇に見舞われる。

作者は二人の女性の人生を交錯させながら、当時の腐敗した社会の実像を描き出しつつ、すべての人間に共通する弱さと欠点を諦観を持って浮かび上がらせている。

素晴らしい。

ストーリーは起伏に富み、全く飽きさせない。

全4巻という長さにひるんでいたが、読み始めると流れるようにページを手繰ることができる。

これほど面白い小説だとは全く予想していなかった。

文学全集への収録が少ないのは、単に分量の問題だけかと思える。

評価は「4」にしようかと思ったが、メリハリを付けて「5」にしましょうか。

また翻訳が素晴らしいというのもあると思います。

これは2004年完結の新訳で、非常に読みやすく、大変良い。

あと感じたことは、登場人物の書き分けが極めて巧みだということ。

脇役も含めた人物の性格が、さして注意深く読まなくても、自然と頭に刻み込まれる。

これは読んで良かった。

著名作品で未読のものを潰していくつもりで手に取ったが、心から楽しむことができた。

皆様にも是非お勧めします。

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