万年初心者のための世界史ブックガイド

2016年3月2日

バンジャマン・コンスタン 『アドルフ』 (光文社古典新訳文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 04:44

著者のコンスタンは1767年スイス生まれ。

フランス革命中、恐怖政治を避けてスイスに滞在中、スタール夫人(ネッケルの娘)と交際、恋人となる。

フランス国籍を取得し、ナポレオン時代に政界にも進出するが、しだいに政権批判を強め、国外追放となる。

百日天下でなぜか再びナポレオン側につくが、弁明書を出したのち、復古王政に仕える。

死の直前成立した七月王政を支持、1830年没。

小説作品は実質、この『アドルフ』のみ。

他に政治思想・宗教書などもあり。

オルテガ『大衆の反逆』のフランス語版序文では、集産主義思想への抵抗者として一言だけだが、なぜか肯定的に触れられている。

本作は、表題の主人公の名前の通り、ドイツが舞台。

(現在ではこの名前だと、あの人物しか思い浮かばないが。)

アドルフという名門出の青年とある貴族の愛人だったエレノールの恋愛が成就した途端、女の束縛を疎ましく感じた男が徐々に別れを意識し、両者の軋轢が激しくなり、ついに悲劇を迎える様が描かれている。

ロマン主義の先駆であると共に、フランス心理小説の代表作という。

恋の高揚期ではなく、その倦怠期と終末を詳細に描写した、特異な恋愛小説。

トルストイ『アンナ・カレーニナ』の、アンナとヴロンスキーの関係を思い起こした。

200ページにも満たないので、読むのは楽。

それでいて、終盤は迫力があり、死に直面した際の信仰、それもしばしば外面的・形式的と思われるだけの儀式が実は必要なことなど、共感を持つ記述もあった。

高校教科書に載るほどの知名度はないが、これは読んで良かった。

楽に読める古典としてなかなか良い。

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