万年初心者のための世界史ブックガイド

2016年2月19日

フランソワ・モーリアック 『テレーズ・デスケルウ』 (講談社文芸文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 06:26

モーリアックはフランスのカトリック作家で1885年生まれ、1952年ノーベル文学賞受賞、1970年没。

この版の訳者は同じカトリック作家の遠藤周作。

感性の鈍い私にも、なかなか味わい深い訳に感じられる。

因襲に支配された田舎町で、愛の無い結婚をして倦怠に満ちた生活を送っている主人公テレーズ。

自身の実家は急進派で反宗教的であり、テレーズも無神論者だが、夫の実家は保守的で旧套、しかしどちらの家の人々も真摯さがなく、頭の中は財産と体面のことしか考えていない。

義妹の恋愛というきっかけから、テレーズは発作的に夫の毒殺未遂と言われても仕方のない行動をとり、告訴されるが、世間体を取り繕うために法律上は無罪となった後、自宅に事実上軟禁される。

自己に満悦することしか知らない夫への嫌悪を持ちつつ、しかし自分が真に何を求めているのかわからない主人公。

夫との生活から逃れ得ても、真の幸福というものは実感できないように思える。

自分から離れて、大きな価値にあえて従わない限りは。

表面上は護教文学のようなものでは全くない。

しかし、「どんな崇高な仕事もない・・・・・どんな高い義務もない」と構えて、個人個人が自由に自身の幸福(と考えるもの)を追求したとして、結局幻滅と失望と不服が永遠に続くだけだということを示唆した作品だとは言えそうです。

 

200ページ弱で短いのがいい。

初心者が、この作家に最初に触れるための作品としては適切だと思われます。

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