万年初心者のための世界史ブックガイド

2016年2月1日

小谷野敦 『 『こころ』は本当に名作か  正直者の名作案内』 (新潮新書)

Filed under: 読書論, 文学 — 万年初心者 @ 04:32

日本人向けの、文学作品のキャノン(正典)案内。

詩は苦手だが、小説・戯曲を読み、十年くらいは意図的に未読のものを読みまくって大体読了したという。

叙事詩はともかく抒情詩は翻訳で読んでどれだけ意味があるか疑わしい、と書いている。

文学作品の良し悪しに普遍的基準は無し。

作品が「分かる」というのは、単に「面白いと思う」の意味だと考えればよい。

名作と言われるものでも、分からなければ正直にそう言うべき。

再読も忙しい現代人には難しい。

前近代の文人、学者が古典を何十回読んでいたとしても、それは他に読むものが少なかったから。

途中で挫折したら、間に十年挟まっていても、再挑戦の際はその続きから読めばよい。

著者も『ジャン・クリストフ』を学生時代に1巻読み、二十年後2巻を読了したという。

あらすじ本も活用してもいいし、それでもつまらなければ放り出すべき。

日本人にキリスト教的背景の作品(ドストエフスキーなど)は向かない。

等々の記述の後、具体的作品のランク付けに入る。

 

 

 

 

「日本人必読の名作」

 

『源氏物語』

シェイクスピア

ホメロス

ギリシア悲劇(喜劇アリストファネスは別、笑いは文化依存的)

以上最高峰の古典はほぼ前近代のもの。

 

 

 

 

「トップクラスの名作」

 

セルバンテス

スウィフト

ゲーテ『ウェルテル』『ファウスト』ではない、小品では『ヘルマンとドロテーア』を勧めている)

ルソー『孤独な散歩者の夢想』

オースティン『プライドと偏見』『エマ』

バルザック『従妹ベット』『ゴリオ』はまだいいが、他は到底これに及ばない)

ユーゴー『レ・ミゼラブル』

ディケンズ『荒涼館』(最高傑作はこれ、『二都物語』『デイヴィッド・コパフィールド』では全くない)

シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』(エミリ・ブロンテ『嵐が丘』よりもこれを)

ポオの短編

メルヴィル『白鯨(モービィ・ディック)』

アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』

トルストイ『クロイツェル・ソナタ』『戦争と平和』は今では大して面白くない、『アンナ・カレーニナ』はまあまあ、『イワン・イリッチの死』は名作)

ゴンチャロフ『オブローモフ』

マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』『王子と乞食』

ヘンリー・ジェイムズ『鳩の翼』

『水滸伝』その他中国白話小説(日本モノは省略)。

 

 

 

 

ここで、推理・SF小説についてのコラムがあり、著者はホームズを好まず、クリスティやクイーンももう一つとし、SFについてはヴェルヌやウェルズならいいが、それ以降はいけないと書いてある。

 

 

 

 

「二位級の名作」

 

ロンゴス『ダフニスとクロエ』

ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル』

ラクロ『危険な関係』

フロベール『感情教育』

ゾラ『ナナ』『居酒屋』

ラディゲ『ドルジェル伯の舞踏会』

プルースト『失われた時を求めて』

ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』

ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』

マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』

シェンキェヴィチ『クォ・ヴァディス』(優れた大衆小説と評されている)

ヘンリー・ミラー『北回帰線』

E・M・フォースター『ハワーズ・エンド』

 

 

 

 

 

「私には疑わしい名作」

 

漱石、鷗外

ドストエフスキー(後期はミルトン、ダンテ並みのキリスト教作家でシェイクスピア、ユーゴーのような普遍性無し)

スタンダール

トーマス・マン

ワイルド

フォークナー

ヘミングウェイ(『老人と海』はよい)

フィッツジェラルド

テネシー・ウィリアムズ

ダンテ

 

 

 

 

 

十五年くらい前からの古典主義者で、まず古典作品を読めと言ってきたと言う著者の断言ぶりが面白い。

一部首を傾げるところもあるし、ドストエフスキー評価のように全く意見を異にするところもあるが。

なお、本書よりはるかにレベルが低いですが、当ブログでも30冊で読む世界文学というブックガイドを書いています。

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