万年初心者のための世界史ブックガイド

2016年1月4日

トルストイ 『アンナ・カレーニナ 全4巻』 (光文社古典新訳文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 07:55

読み切りました・・・・・。

文豪トルストイの『戦争と平和』と並ぶ、もう一つの代表作。

オブロンスキー公爵の妹で高級官僚カレーニンの妻アンナ、青年軍人ヴロンスキー、オブロンスキーの妻の妹キティ、良心的で理想家肌の地主貴族リョーヴィンの四者が織り成す物語。

非常に読みやすく、流れるようにページを手繰ることができる。

恋愛心理小説としても、思想小説としても極めて完成度が高い。

加えて社会小説としても、19世紀初頭のロシアを描いた『戦争と平和』よりも、作者トルストイにとっての同時代を描いたこちらの方が良いと感じた。

急激な資本主義化と西欧文明の流入がもたらす弊害、没落する地主貴族と社会的無秩序、拝金主義と物質主義の蔓延、信仰の後退とそれに伴う精神的空白および狂信的過激主義の台頭など。

また末尾近くで、本書刊行時の露土戦争でナショナリズムに興奮する世論が全能の支配者となり、社会的上層部すらがそれに押し流される事態の醜悪さが巧みに描かれてもいる。

パン・スラヴ主義の美名の下に起こった現実を揶揄したものだが、本書を完璧な芸術作品として激賞したドストエフスキーも、この描写には批判的意見を述べたという。

だが、これはトルストイに分があるよなあと思える。

以上のような社会の頽廃を抑えるために、既存の正教会とは異なる民衆の素朴な信仰に望みを託したトルストイの期待は全く空しいものだったと言うしかない。

 

面白い。

これだけの大長編にもかかわらず、ほとんどテンションを落とさず読み通せる。

翻訳も素晴らしいです。

訳者と出版元に深く感謝したい。

この古典を10日余りで読了できて、書名一覧での通読難易度を「難」ではなく「中」に、評価を「4」にできるのは、私にとって大きな喜びです。

19世紀小説の代表格として是非お勧めしておきます。

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