万年初心者のための世界史ブックガイド

2015年8月6日

下田淳 『居酒屋の世界史』 (講談社現代新書)

Filed under: ヨーロッパ — 万年初心者 @ 05:12

金銭(現物貨幣を含む)と引き換えに酒を飲む場である居酒屋を通じて見た歴史。

通史編では、古代オリエント・ギリシア・ローマ、中近世ヨーロッパ、近現代ヨーロッパ、イスラム、中国・韓国、日本が扱われ、テーマ編では、教会・売春・芸人・犯罪と陰謀が記述される。

主要論旨をまとめた、三つのキーワードが提示される。

「農村への貨幣経済の浸透」=古代においては農村居酒屋は無し、都市・街道にのみ存在、それが中世以降農村にも出現。

「多機能性」=居酒屋が金貸し、裁判、冠婚葬祭、賭博、演芸、売春、商談、医療、職業斡旋などの場として機能する(これは主にヨーロッパのみ)。

「棲み分け」=上記機能が近代化・工業化とともに分離・独立していく。

 

古代においては商業・交通の盛んな都市と街道にのみ居酒屋が存在、また上流階層では無料接待が基本だったが、中世盛期以降、農村への貨幣経済浸透によって居酒屋が出現、共同体の様々な機能を併せ持つ場として成長、さらに近世の宗教改革で飲酒を伴う集会が教会から追放されたことにより、俗性の強い共同体機能が居酒屋に移り、最盛期を迎える。

しかし、近代化が深化するにつれ、その機能がカフェ、レストラン、ホテル、劇場などに分散して「棲み分け」が進行、居酒屋は単なる飲酒場に衰退していく。

あと、酒自体の話で、醸造酒と蒸留酒の区別、後者の普及が禁酒運動の一因になったとかいう話も。

非ヨーロッパ地域では、中国の茶館をやや例外にして、イスラムのカフェや日本の居酒屋には多機能性は無し、コミュニティセンターとしては日中韓・イスラムとも寺院が使用されていた。

ヨーロッパ世界での権力の分立が農村への貨幣経済浸透を阻止せず、これがヨーロッパ近代を生んだと書かれていて、何やら最後にずいぶん話が大きくなった。

 

全然期待せず、暇潰しのつもりで読んだが、中々良かった。

私が推薦する社会史関係の本は苦手な人にもお勧めです。

 

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