万年初心者のための世界史ブックガイド

2015年5月25日

ヴィクトール・ユゴー 『九十三年 上・中・下』 (岩波文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 07:24

1874年刊。

ユーゴー最後の小説。

西フランス、ブルターニュ半島東南部ヴァンデ地方で、1793年保守的な農民がパリの革命政府に反抗して蜂起した、王党派反乱を描いた歴史小説。

剛毅で冷徹な王党派貴族ラントナック、彼と同様に冷徹で革命の理念を狂信するシムゥルダン、同じ革命軍に属しながらより寛容で温和な態度を持するゴォヴァンの三人が主に登場する。

容易に予想されるように、もちろん著者のユーゴーは、革命政府軍・ヴァンデ軍双方の残虐行為を記しながらも、結局革命の理念を進歩の名の下に支持し、ただそこに多くの暴力が伴ったことを遺憾として、ラントナック・シムゥルダン両者の長所・短所を描きつつ、ゴォヴァンを最も気高い存在として扱っている。

しかし、私自身の同情と共感は、はっきり反革命と王党派の側にあるので、『レ・ミゼラブル』を読んだ時と同じく、ユーゴーの史論は軽く読み飛ばすしかない。

ユーゴーがパリ・コミューンの悲劇を目撃した上で書いた作品だが、それなら「人類社会の進歩の必然」や「自由を求めて闘う民衆の正しさ」を根本から疑うべきだったんじゃないですか、と言いたくなる。

とは言え、ストーリー展開は圧倒的に面白く、次々と興味ある場面を描き出し、初心者にも驚くべきスピードでページを手繰らせることは間違いない。

身の程知らずの感想ですが、ユーゴーのその能力だけは認めるしかない。

私が今まで読んだ全ての作家の中で、最もストーリー・テラーとしての力量が感じられます。

知名度は『レ・ミゼラブル』に遠く及ばないが、これも読んで良かったと強く感じる。

書名一覧での評価は「4」にしようかと思ったが、思い切って「5」にしますか。

それくらい一気に読めた作品です。

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