万年初心者のための世界史ブックガイド

2015年4月5日

戸髙一成 『海戦からみた太平洋戦争』 (角川oneテーマ21)

Filed under: 近代日本 — 万年初心者 @ 08:05

著者には『海戦からみた日清戦争』『海戦からみた日露戦争』もあり。

それぞれ黄海海戦・日本海海戦が中心。

太平洋戦争では膨大な戦いが積み重ねられたので、同様の叙述は不可能。

あえて言えば、決定的海戦は1942年のミッドウェー海戦ではなく、1944年マリアナ沖海戦およびレイテ沖海戦であり、それ以前は個々の戦闘経過記述よりも背景説明に重点を置いている。

1907年帝国国防方針によって米国を仮想敵国とし、侵攻してくる米艦隊に対し邀撃(ようげき)・漸減作戦を採るものとされていたが、山本五十六は開戦当初での徹底攻撃を主張。

山本は36年12月~39年8月まで海軍次官(以後は連合艦隊司令長官)。

37年2月~39年8月の米内光政海相、37年10月~39年10月井上成美(しげよし)海軍省軍務局長と共に日独伊三国同盟に反対を貫く。

40年以降は(1月~7月は米内内閣にもかかわらず)海軍も開戦に積極的となる。

真珠湾攻撃が不徹底だったとの指摘について。

山本以外の幕僚はやはり伝統的漸減作戦に固執しており、短期決戦に持ち込むため「敵士気を喪失させる」というところまで考えず。

山本の真意はあくまで避戦だったが、軍人としての功名心との葛藤。

空母を主要目標としないことは山本自身が決定。

敵士気喪失が狙いなので、あえて当時主戦力と考えられていた戦艦を目標とした。

しかし(大使館による通告遅れという想定外の事態があったものの)米世論を完全に読み違え、対日報復感情を激化させてしまった。

こうした山本ははたして「知米派」か?

「真珠湾で沈められた戦艦が浮揚修理されたので、攻撃は無意味」とするのは山本の真意からずれているが、山本の米国理解に問題あり。

開戦後、連合艦隊司令部に軍令部が振り回され、前者は夢想的な積極策を立案するが、しかしハワイ攻略や、ましてや米本土上陸など不可能。

その積極策が完全に挫折したミッドウェー海戦での第一航空艦隊の護衛戦力が戦艦2隻、重巡洋艦2、軽巡洋艦1、駆逐艦9。

いかにも少ない。

空母に随伴できる速力を持つ艦艇はすべて張り付けるくらいじゃないと・・・・・。

ミッドウェー敗北以後は(実際には43年制定の)「絶対国防圏」(いわゆる内南洋と西ニューギニア)で守勢戦略を採るべきで、ソロモン・ギルバート・マーシャル諸島は放棄すべきだった。

現実には42年後半から44年前半にかけて後者で激烈な消耗戦が行われ、日本海軍は戦力を劇的に低下させてしまう。

まず南ソロモンのガダルカナル島での攻防。

ここでの損害ももちろん大きかったが、43年2月撤退後もソロモン諸島とニューギニアで航空戦力を消耗。

ガダルカナル戦半年間で海軍機2076機喪失だが、その後1年間のソロモン諸島攻防戦で9697機喪失と記されている数字に驚く。

この後者の損害こそが致命的であり、44年前半から、戦力を大拡充し満を持して内南洋のカロリン・マリアナ・パラオ諸島に侵攻してきた米軍に対する大敗に繋がった。

結局、日米の今大戦は太平洋上に点在する洋上航空基地をめぐる攻防戦になったが、日本側は陸海軍の連携不備で、海軍は「敵艦隊撃滅」に固執しすぎ、陸軍の方がまだしも合理的と思われる面すらあった。

44年前半、せっかく整備した内南洋の基地航空隊も米機動部隊に各個撃破され、海上補給護衛の不備はただでさえ乏しい生産能力を一層低下させた。

射程が長く航跡が見えにくい酸素魚雷は、日本が開発した中でも技術的に隔絶して優れたものだったが、それがかえって突撃精神を奪った面もある。

なお、ある歴史雑誌で、「珊瑚海海戦」「ミッドウェー海戦」「第2次ソロモン海戦」「南太平洋海戦」「マリアナ沖海戦」という日米間の五つの空母決戦のうち、日本側が戦術的勝利を収めたとされる「珊瑚海海戦」と「南太平洋海戦」でも戦略目標達成には失敗しているのだから(前者は「ポートモレスビー攻略」、後者は「ガダルカナル島奪還」)、結局日本海軍は空母戦で米国に事実上全敗しているとの記事を読んで衝撃を受けたことがあったが、考えてみれば確かにそうとも言えるか。

惨敗した「ミッドウェー海戦」と「マリアナ沖海戦」では、それぞれ「ミッドウェー島攻略と米空母撃滅」および「サイパン島死守と日本本土の米長距離爆撃圏内化阻止」という戦略目標はもちろん失われているし、引き分けの「第2次ソロモン海戦」でも「ガダルカナル島奪還」に失敗している。

44年6月のマリアナ沖海戦で帝国海軍の空母部隊は事実上壊滅し、日本の敗北が決定的となる。

続くレイテ沖海戦では戦艦部隊も消滅、特攻作戦でわずか数機で護衛[小型]空母撃沈1隻撃沈の戦果を挙げるが、これは隙を突いた好条件に恵まれたからで以後は成り立たず。

最後、原爆を輸送した帰り、日本軍潜水艦に撃沈された米重巡洋艦インディアナポリスの例を引き、将兵の権利と義務、責任の所在についての話をしておしまい。

 

ざっと読んだが、悪くない。

そもそも一冊で太平洋海戦史を語るのは不可能。

これはまだいい方でしょう。

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