万年初心者のための世界史ブックガイド

2015年4月1日

ウィリアム・ゴールディング 『蝿の王』 (集英社文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 05:46

もちろん高校教科書に載るほどの知名度は無く、1954年発表とは言え、著者は1983年ノーベル文学賞受賞、1993年没と、基本的に現代文学に含まれるものなので、取り扱わなくてもよいかと思ったが、これはどうしてもと思ったので読んでみた。

初版を出した出版社の責任者は、保守思想家としても著名な詩人T・S・エリオットだったそうである。

核戦争から疎開したイギリスの少年たちが乗った飛行機が無人島に不時着、当初は皆一致協力して生き抜いていく見込みが立ったものの、やがて相互不信と敵意と憎悪にのみ込まれ、おぞましい相互殺戮に至る悲劇を描く。

群衆心理の虜になり、規律と秩序の必要を説く少数派への集団的暴力に酔い、自分たちの気まぐれな感情を絶対視する少年たち・・・・・。

自由な人間が自分たちの理性だけを頼りにして個人間の自発的な契約によって社会を形作ることができるという考えに対する根本的懐疑を感じる。

人間に性善の可能性があるとしても、それは自己の内部にある性悪を真正面から直視し自制することからしか得られないということを思い知らせてくれる名著。

本書について、伝統も信仰も常識も位階的秩序も失い、革命と戦争での大量殺戮に耽る20世紀以降の民衆の姿を暗示していると考えるのは、余りにも凡庸な解釈でしょうか?

しかし私にはそうとしか思えない。

疑いようも無く確固として上位にある、外的な権威と権力によって悪夢から目覚め、(とりあえずは)救われるというラストを読むと特にそう感じる。

やはりすごい作品。

知名度だけから言えば、私のレベルでは読まなくてもいい本だが、これは読んで良かった。

本当に圧倒される。

文学の持つ力を実感させられる名作です。

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