万年初心者のための世界史ブックガイド

2015年3月24日

スタンダール 『パルムの僧院 上・下』 (新潮文庫) 

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 06:34

訳者は大岡昇平。

フランス軍侵攻からナポレオン没落後のウィーン体制下のイタリアを舞台にした恋愛・政治小説。

オーストリア支配下のロンバルディア・ヴェネツィア王国(ミラノが中心)の貴族ファブリス・ヴァルセラ・デル・ドンゴが主人公。

物語冒頭、フランス軍とナポレオンが文字通り解放者だったと言わんばかりの記述に鼻白む。

スタンダール(本名アンリ・ベール)自身が従軍していたのだからやむを得ないか。

ファブリスが熱に浮かれてワーテルローに向かい、戦場に紛れ込んだ描写は詳細で面白い。

そしてナポレオンの決定的没落後、当局の追及を避けてパルム(パルマ)公国に逃れ、美しい叔母ジーナ(後のサンセヴェリーナ公爵夫人)とその愛人の有力政治家モスカ伯爵の庇護を受け、聖職者として出世の道を歩む。

ファブリスと叔母は精神的近親相姦と思えるほど緊密な関係で、モスカ伯爵との奇妙な三角関係を窺わせるが、実はファブリスはあるフランス軍士官との間の子であるとの仄めかしが物語冒頭であります。

彼ら三人は内心自由主義的考えを持ちつつ専制君主である大公に仕える。

反対派の自由主義党としてファビオ・コンチ将軍、ラヴェルシ侯爵夫人が出てくるが、彼らはかなり低劣な人物として描かれている。

(専制君主の手先で陰険な検察長官ラシも。)

ファブリスはある殺人事件の当事者となり投獄され、そこで毒殺される危険に瀕し脱獄、政敵コンチ将軍の娘クレリアと恋仲になって、という具合に物語は展開していく。

ウィーン体制下の専制君主国における政治的陰謀と権力闘争の実情がよく描かれている政治小説。

『赤と黒』よりもそうした時代背景が詳細に記述され、ストーリーの展開もより起伏に富んでいるので読みやすくはある。

しかし主人公にあまり共感を持てず、感情移入もできないのは同じ。

また文章中から垣間見れる、作者の社会観・歴史観にもあまり賛同できない。

(ヨーロッパ自由主義のさらに先を行っているアメリカ共和国への皮肉で冷笑的視線など、一部を除いて。)

そこそこ面白くはあるが、読了後もさほどの充実感は得られない。

身の程知らずの感想を言えば、やっぱりスタンダールは私には合いません。

ドストエフスキーなどを読み終えた際の感覚とは全く異なる。

スタンダールでは、他に『カストロの尼』『ヴァニナ・ヴァニニ』『恋愛論』などがありますが、初心者は『赤と黒』と本書の代表作二編を読んでいれば十分過ぎるでしょう。

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