万年初心者のための世界史ブックガイド

2015年3月20日

レマルク 『西部戦線異状なし』 (新潮文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 08:05

両大戦間に書かれた極めて有名な反戦小説。

タイトルは「異常」じゃなくて「異状」です。

大学時代にジョージ・ケナン『アメリカ外交50年』の第一次世界大戦の章で引用されているのを見て買ったのだが、それきり1ページも読まずに処分してしまった。

この度、手に取ってみたら実に読みやすく、翻訳にやや古さを感じたものの、集中して取り組んだら実質二日で読めた。

青年志願兵(といってもほとんど強制徴用)が殺戮と膨大な死の中で現実生活との接点を失い、戦友との絆を別として、虚無感に陥る様を鋭く描写している。

銃後で無責任に好戦論を語るくせに、自らはほとんど何の犠牲も払わない民衆(の一部)も。

機械化・産業化された現代戦の悲惨さ、残酷さを眼前に突きつけられる。

核兵器の出現以前から、第一次大戦ですでに戦争が社会の均衡を根底からくつがえし、政治の一手段として遂行されるようなものではなくなっていたことがよくわかる。

どんな地域の、どんな時代においても、戦争はすべて悲惨なものに決まっているが、それでも18世紀のヨーロッパでは、それが平和と均衡の回復という目的に多少とも適合していると思わせる程度に制限されていた(マイケル・ハワード『ヨーロッパ史における戦争』参照)。

それが民主化と産業化の進行した19世紀に破局の準備がなされ、それが20世紀に最大限に不幸な形で爆発し、人類は滅亡の淵に立たされたわけである。

面白いというには深刻すぎる話だが、読みやすいことは間違いない。

文学的関心だけでなく、20世紀という時代の理解のためにも読むといい。

そろそろ光文社古典新訳文庫あたりで新訳を出して欲しいところですが。

(ただ著者の没年が1970年だから版権の問題があるかもしれません。)

機会があれば是非お手に取って下さい。

 

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