万年初心者のための世界史ブックガイド

2015年2月13日

スタインベック 『怒りの葡萄 上・下』 (ハヤカワepi文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 09:02

昔は高校世界史教科書の最後に出てくる文学者だったのだが、今は『世界史用語集』には載っていない。

本文にではなく作品一覧表ならばあるのか。

1930年代、大恐慌下オクラホマ州の貧農ジョード一家の悲惨な運命を描く。

貧しく粗野ではあるが、根は善良で強い共助の精神を持つ主人公一家。

特に主人公トムより、その母が印象的。

空しい期待に駆られたカリフォルニアへの移住、大資本による土地兼併、農業機械化と失業者増大、富裕層の横暴など、資本主義と自由市場がもたらす矛盾と抑圧を完膚無きまでに描いた本書のような作品は、市場原理主義を教条としたある時期以後のアメリカでは、はやらないんでしょうね。

しかし、かえって今だからこそ読む価値がある。

公権力を私物化し、労働・生活条件の改善と安定を目指す人々の運動すべてを「アカ」のレッテルを貼って、リンチを組織して弾圧する金融資本と富裕層など、現在の社会でも本質的には変らない。

ストーリー自体の面白さと迫力も、登場人物の魅力も、事前に考えていたよりもかなり上回った。

作中の社会主義的共同体に対する素朴すぎる好意的描写にやや違和感を持たなくもないが、全体的にはあまり気にならない。

この面白さは嬉しい誤算であった。

ラストは登場人物の行末が明らかになるというものではないが、しかしかなり印象的であることは間違いない。

これを時代遅れの親左翼文学と片付ける気は私にはしません。

広告

WordPress.com Blog.

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。