万年初心者のための世界史ブックガイド

2014年4月17日

ゾラ 『居酒屋』 (新潮文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 08:57

「ルーゴン・マッカール叢書」という連作小説の中の一巻。

第二共和政から第二帝政時代のパリ下層階級の悲惨さを描いた作品として、教科書的な知名度も高い。

洗濯女ジェルヴェーズが主人公。

情人ランチエに捨てられた後、ブリキ職人クーポーと結婚、娘ナナをもうける。

最初気のいい男だったクーポーだが、怪我をきっかけに酒で身を持ち崩す。

堅実な暮らしを送る鍛冶屋グージェにも好意を寄せられるが、ジェルヴェーズは自身の自堕落さもあり、徐々に零落していく。

その中での、身内との軋轢、悪意の噂話や陰口、虚栄心と見栄の描写は、非常にリアルだ。

印象的なシーンも多数あるが、中盤辺り、誕生日宴会での食事シーンは生命力の爆発といった感じで、迫力に満ちている。

それ以後の転落の描写はすごい。

ゾッとするほど恐ろしい。

モーパッサン『女の一生』で、「自然主義ならではのいやーな感じ」に触れたが、そんなもの目じゃない。

ラストも含め、こっちの方がはるかに悲惨。

他の面では、周囲を不幸にするだけの、文字通り寄生虫のような存在であるランチエがしたり顔で進歩的政治論をぶつ場面があり、読んでいて、そこで嫌悪感が絶頂に達した。

それに限らず、民衆の醜悪な一面を容赦無く描いており、これが著者の進歩的政治姿勢とどう繋がるのかなと、やや不審に思った。

ジェルヴェーズを地獄の苦しみに追い込んだのは、もちろん社会の矛盾が主因ではあろう。

それは、作中で最も堅実で好人物のグージェすら、産業革命の進展の中、質素な暮らしをしてようやく生計を維持している描写からも窺われる。

しかし、本人の自堕落や、そして何より親族を含む周囲の民衆の酷薄さも、あまりに明白である。

巻末の訳者解説によると、やはり発表当時、左右両派からの複雑で入り混じった批判と賛美があったそうで、ゾラ自身は、自分を民主主義・社会主義作家ではなくただの小説家あるいは自然主義作家と呼んでくれ、と言っており、また、自分は上流階級だけでなく下層民衆の悪も容赦無く描くと述べたそうである。

700ページとかなりの分量があり、序盤はややページを手繰る手が止まり気味になったが、後半はかなりのスピードで通読できた。

やはりすごい作品だ。

名作と言われるだけのことはある。

素人でも十分そのすごさはわかる。

やはり必ず読了しておくべき作品と言えるでしょう。

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