万年初心者のための世界史ブックガイド

2014年3月29日

魯迅 『故郷  阿Q正伝』 (光文社古典新訳文庫)

Filed under: 文学 — 万年初心者 @ 03:53

高校世界史教科書の20世紀文化の項で、「東洋文学」(古過ぎる言い方ですが)の代表者として、インドの詩人タゴールとともによく載せられている人。

『故郷』や『藤野先生』は国語教科書で読んでる人もいますか。

知名度では劣るが、本書収録の作品では、他に『端午の節季』が中々良い。

急進・進歩的政治姿勢で知られた作家で、中華人民共和国建国後は、革命文学の大家として祭り上げられた人であり、本書を読んでも確かにそう感じられる部分はあるが、一方でそれに収まりきれない面がある気がする。

例えば、『狂人日記』。

衝撃的な作品であり、伝統的な儒教道徳を激しく批判したものというのが普通の解釈。

表面的には確かにそう読めるが、しかし、人間の本源的攻撃性や嗜虐欲を指摘し、しかもそれが権力という外在的なものに起因するのではなく、民衆自身の内部に由来するものであると喝破しているようにも読める。

本書の解説によると、魯迅の晩年、急進的文学者たちの間で、作家自身の連合を重視する魯迅と胡風、巴金らと、共産党の指導を重視する周楊ら党員作家との対立があったそうである。

酷い言い方かもしれないが、魯迅は結果として1936年に死去して幸せだったとも思われる。

もし長命を保ち、中華人民共和国成立後も生きていれば、反右派闘争や文化大革命で、老舎のように迫害され悲惨な死を迎えるか、郭沫若のように心にも無いことを言わざるを得ない立場に追い込まれたかもしれない。

この人は、政治革命や社会変革、自由化や民主化では決して解消できない、それどころか益々その本性を顕す、人間の性悪性というものを、実は知っていたのではないかと思わせる本でした。

読みやすいし、結構面白い。

お勧めします。

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