万年初心者のための世界史ブックガイド

2013年11月24日

松戸清裕 『ソ連史』 (ちくま新書)

Filed under: ロシア — 万年初心者 @ 15:53

ごく簡潔なソ連通史。

今の若い人は「ソ連」という国を教科書でしか知らないんですよねえ。

私が年を取ったというだけの話なんですが、何とも不思議な感じがします。

ここでも書いたんですが、以前はむしろ「ロシア」の方が、「昔はあったけど今は無くなった国」みたいな感覚でした。

閑話休題。

本書は全6章のうち、スターリンの死まででわずか2章。

戦後史の比重が高い。

だが1917(1922)~1991年のソ連邦全体の歴史を考えればかえってバランスがいいと言うべきか。

内容的にも特色があり、政治史だけではなく経済史にも多くのページを割く。

具体例としては、処女地開拓、国民経済会議設立、MTS(機械・トラクターステーション)改組。

他にもコルホーズの大規模化、付属地(私的使用可能地)制限、コルホーズ農民のソフホーズ並みの待遇改善等々。

「一党独裁の非民主的国家」としか言いようが無いソ連ではあったが、少なくともスターリン時代以後は、国民生活の向上を求める民意に配慮する(せざるを得ない)一面があったことが記述されている。

末期の章では『ゴルバチョフ回顧録』からの引用が多数載せられている。

あの分厚い本はとても読めないですから、これもまあ良い。

なお、経済・社会史については大体の雰囲気が解かればいいですが、政治史については少なくとも最高指導者の順番だけはきちんと憶えて下さい。

1917年十一月革命とレーニン政権、24年レーニン死とスターリン体制への(数年をかけた)移行、53年スターリン死とフルシチョフ台頭、64年ブレジネフ、82年アンドロポフ、84年チェルネンコ、85年ゴルバチョフ、91年共産党クーデタ失敗とソ連崩壊、ロシアのエリツィン政権、という順序と年代は、初心者でも(アンドロポフとチェルネンコはまあ除いていいとしても)必ず暗記が必要です。

それにソ連と対峙した米国の戦後大統領の順序なども一般常識として頭に入れておくべき。

1945年トルーマン、53年アイゼンハワー、61年ケネディ、63年ジョンソン、69年ニクソン、74年フォード、77年カーター、81年レーガン、89年ブッシュ(父)、93年クリントン、2001年ブッシュ(子)、09年オバマ、と何も見ずにそらでスラスラ出てこないと困る。

任期4年、再選で8年、その加算年で替わっていない2人は何か変事(暗殺とウォーターゲート事件)が起こったということ。

で、どの大統領が共和党で民主党かは当然すぐわかりますよね?

わからないという方はもう少し基礎固めに時間を費やして下さい。

加えて、戦後イギリスの首相とその与党(保守党か労働党か)[黒岩徹『イギリス現代政治の奇跡』]、第五共和政以降のフランス大統領とその支持基盤(保守か左派か)[渡辺啓貴『フランス現代史』]、(西および統一)ドイツの首相と与党(キリスト教民主同盟と社会民主党と他党との連立形態)[小林正文『指導者たちでたどるドイツ現代史』」、それから日本の首相[福永文夫『大平正芳』]も、それぞれ任期順と就任年度を記憶することが望ましいです。

中国についても、1949年人民共和国成立、58年「大躍進」政策開始とその大失敗、60年代初頭の調整政策、66年文化大革命発動、71年米中接近と林彪失脚、76年毛沢東死と四人組逮捕、78年改革開放政策確立、89年天安門事件といった具合に、「穏歩」と「急進」のサイクルを年代とともに捉えておく。

これだけ暗記した上で、戦後史の概説書を読むと、非常に史実の見晴らしがよくなって、理解度が大きく向上します。

そして、戦後世界史の時代区分 その1 と 同 その2 という記事で書いたようなストーリーを頭の中で再現できればよい。

私もあやふやなところがあるので、あまり偉そうにお勧めできる立場でもありませんが、少なくとも、この引用文でも書かれてある通り、「歴史は流れがわかればそれでいいんであって、年号などを暗記させるのはナンセンス」といった意見には私は徹頭徹尾反対です。

この点では私は極めて頭が固く、時代錯誤とか頑迷固陋とか何と言われようと自分の意見を変えるつもりはありません。

年号を含む細かな事実を理解した上でなければ、「歴史の流れ」と言いつつ、ごく単純化され偏向したストーリーに知らず知らず足を捕られてしまう惧れが大きいと思います。

話が逸れ過ぎました。

本書の感想に戻ると、特筆すべき点は無いもののコンパクトで読みやすい。

教科書レベルの次に読む本としてはいいかもしれない。

史観もバランスが取れている印象で、特に違和感は無い。

もうソ連型社会主義に幻惑される人間などいるわけ無いのだから、終始共産主義への糾弾口調で記す必要も無いでしょう。

本書を読み終えたら、以後ケナン『レーニン・スターリンと西方世界』ヴォルコゴーノフ『レーニンの秘密』メイリア『ソヴィエトの悲劇』パイプス『ロシア革命史』クルトワ『共産主義黒書 ソ連篇』などを読み進んでいって下さい。

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