万年初心者のための世界史ブックガイド

2013年2月15日

『改訂版 詳説日本史B  [2010年版]』 (山川出版社)

Filed under: 教科書・年表・事典 — 万年初心者 @ 10:35

2003年刊行版を買い換えました。

事情により最新版ではなく、少し前に出たものになりましたが。

この『詳説日本史』シリーズで、特徴のある表紙の赤色が、2003年版に比べてやや濃くなってる。

高校の頃、使用していた版はもっと毒々しいくらい真っ赤のやつでした。

末尾の執筆者一覧を眺めると、何と言ってもまず加藤陽子氏(『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』)と坂野潤治氏(『日本政治「失敗」の研究』等)が目に付く。

(もっとも確認したら、坂野氏は2003年版でも執筆者に名を連ねてますね。)

あと、鈴木淳氏は『維新の構想と展開』の著者か(たぶん同名異人ではないはずです)。

冒頭、長屋王の変を題材に、史料の批判と考察をしたコラムがあって、これが相当面白い。

こういうの、読み飛ばさない方がいいですね。

本文に入るが、やはり私のレベルでは、歴史観や史的解釈にまでは踏み込む能力は全く無いので、世界史教科書の記事と同じく、どういう歴史用語が載せられているのか、そのうちどれが太字(ゴチック体)で記されているのかという話だけを少しするだけにします。

ざっと見て、すぐ気付くのが、太字の歴史用語の数が著しく減少していること。

前版までは脚注の箇所を含めて、相当数の太字表示がありましたが、かえって何が重要かわかりづらくなったという反省からか、この版では大幅減。

例を挙げると、『魏志』倭人伝、中臣鎌足、中大兄皇子(天智天皇は太字)、嵯峨天皇、紫式部、源義経、新田義貞、徳川家斉、吉田松陰、黒田清隆、加藤高明、岸信介、池田勇人、佐藤栄作が、太字ではない通常活字。

聖徳太子が括弧内に入れられ太字でない(厩戸王は太字)。

和同開珎に先駆け富本銭が載っている。

以上2点は新たな発見や研究動向が教科書にも反映されたということでしょう。

薬子の変より平城太上天皇の変という言葉が先に出ている。

1457年コシャマインの蜂起、1669年シャクシャインの戦い、といった具合に、それぞれ「~の乱」という表記は使用せず。

アイヌ民族への配慮と国民統合維持の観点から、こういうことには最大限慎重であらなければならないのはわかるが、「乱」と使っても、別に鎮圧された側が道義的に劣等だというニュアンスはほとんど無いと思うのですが・・・・・・。

もちろん、その鎮圧を「征伐」と書くのはまずいでしょうが。

(これより前の坂上田村麻呂の東北遠征を「蝦夷征討」と呼んでいいのか、[個人的感情が整理できず]微妙で判断に迷う)。

与謝蕪村、小林一茶がそれぞれ、蕪村、一茶と略されてるのは、何か理由があるんでしょうか?

生類憐みの令に関連して、服忌(ぶっき)令を出し、武力で相手を殺傷して自身の上昇をはかる価値観を否定することを目的としていたとの肯定的側面を記述しているのは、教科書レベルを超えた説明で面白いと思った。

新井白石が創設した閑院宮家が太字なのは、私が高校生だったころから不思議に思ってました。

皇室の分家の一つを、この時期たまたま設けたというだけでしょと考えていたんですが、別の本で皇室系図を確認したところ、後桃園天皇までいった後、閑院宮系統の光格天皇が即位、以後は仁孝→孝明→明治→大正→昭和→今上と現皇室に一直線で繋がることを確認して、ああそれで太字なのかと納得。

これを説明して下さいよ。

でないと重要性がわからない。

幕末に日本に来航したロシア人4人、ラクスマン・レザノフ・ゴローウニン・プチャーチンの全員が太字。

最初に記した太字でない人名と比較すると、何かアンバランスな印象を禁じえない。

第2次日韓協約で設置された機関は、「統監府」が正式名称で、やはり「韓国統監府」ではないようです。

1885年内閣職権、1889年内閣官制、1907年公式令は影も形も無し。

この三つの法令による、首相権限の推移(それぞれ大→小→大[ただし公式令の意図は完全には実現できず])は、中等段階での日本史教育における重要テーマだと考えるようになっているので、少しでも載せて頂けないでしょうか。

大逆事件について、どれほど稚拙なものであっても実際に爆弾を作成し明治天皇暗殺を企てた人物はいた、しかし事件はフレームアップされ無関係の人々も多くが犠牲となったのであって、明治日本の汚点の一つだという評価は揺るがない、ということが短い脚注の文章からでも読み取れるようになっているのは、非常に良いと思いました。

終わりです。

私の知識では教科書の記述の全般的評価は不可能です。

しかし、ごく基礎的な知的道具として、この標準的教科書を自宅に常備しておくのは決して悪くないと思います。

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