万年初心者のための世界史ブックガイド

2013年2月13日

小林正文 『指導者たちでたどるドイツ現代史』 (丸善ブックス)

Filed under: ドイツ — 万年初心者 @ 13:31

2002年刊。

著者はボン特派員を経験した元読売新聞記者。

同じ丸善の黒岩徹『イギリス現代政治の軌跡』と同じく、首相を任期順に並べて叙述する形式の第二次世界大戦後の現代史。

西ドイツおよび再統一ドイツの首相と就任年度は、初心者でも全て暗記が必要。

そして、『アデナウアー回顧録』の記事で一部記したような、ボン基本法、5%条項、ハルシュタイン・ドクトリン、ベルリン管轄権、建設的不信任制度、社会的市場経済、東方外交(政策)、オーデル・ナイセ線、大西洋派と独仏派といった用語の意味を理解した上で記憶すること。

加えて、主要政党名も。

CDU、CSU、SPD、FDPという略称から正式な党名と政治的立場がすぐ思い浮かぶでしょうか?

順に、キリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟、社会民主党、自由民主党。

保守のCDUと左派のSPDが二大政党、CSUはバイエルン州のみを基盤とするCDUの兄弟政党、中道のFDPが小政党ながらCDUともSPDともしばしば連立しバランサーとしてドイツ政界の両極化を阻止する絶妙な役割を果たす。

ドイツ語を一言も知らなくても、政党名を英訳すれば、それぞれの略称は記憶できますよね(SPDのみアルファベットの順序に注意)。

それらにプラスして、(1980年代以降の)緑の党、(旧東ドイツの社会主義統一党の後裔)民主社会党とそれを継ぐ左派党もチェック。

以上、高校世界史より少し詳しいぐらいのレベルですが、これらを理解しておけば、新聞・テレビの国際ニュースでわからないところはほとんど無くなります。

さて、具体的な史実で気になったところを適当に取り上げてみると、1949年ドイツ連邦共和国が成立するが、この時点では法的にはまだ完全な主権国家ではない。

米英仏の軍政長官が高等弁務官に変わった上で存在しており、非軍事化・ルール管理・外交・難民・連合国の安全保障などが、連合国選管事項とされた。

(西ドイツ建国当初は外相は置かれず、外務省が設置されたのは1951年以降。)

「安全保障または民主的秩序の維持」「三国の国際的義務」から必要とされる場合は米英仏三国が全権を掌握するとされていた。

50年シューマン・プラン提案、51年ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)調印、52年発足。

このECSCみたいに、その基になった条約調印と組織発足の年度がずれるのは、ややこしいですね。

ヨーロッパ経済共同体(EEC)も確か57年ローマ条約調印、58年発足でしたよね。

そう言えば、19世紀のドイツ関税同盟も、1833年調印、34年発足でしたか。

上記、欧州統合は順調に進展するが、安全保障面では、50年プレヴァン・プランと欧州軍構想が提案され、52年欧州防衛共同体条約が調印、しかし54年仏議会が批准を拒否して挫折、結局同年パリ協定が締結され、それによって西ドイツのNATO加盟と主権回復が成されることになる(岩間陽子『ドイツ再軍備』。このパリ協定も発効は翌55年)。

ただし、ここでもベルリンおよびドイツの再統一、最終的平和条約については、連合国が権利を留保する形になっており、これが1989~90年にかけて意味を持つことになる。

55年西独とソ連は国交を回復しているが、ということは東独と外交関係を持つ国とは断交するというハルシュタイン・ドクトリンは、ソ連だけは例外としていることになると、意外な盲点を本書では指摘してくれている。

西独は東独の国家存在自体を認めず、ベルリン封鎖の十年後、58年のベルリン危機はソ連がベルリンでの権限を東独に委譲することによって西側に東独承認を強要しようとして生じたもの。

結局、事態はソ連の思惑通りにはならず、61年ベルリンの壁が建設される。

71年、しばしば強硬策をソ連に突き上げた東独指導者ウルブリヒトが解任され、同年四カ国ベルリン協定で東西ベルリンの状況は一応安定、72年には東西ドイツ基本条約締結。

この基本条約においても、東西ドイツは国家間関係を持つが同民族のため通常の外国同士ではないという解釈を西独は建前としては守っている。

なお、内政面について、日英などと違い、首相に議会の解散権が無いことをチェック。

信任案が否決され、なおかつ別の首相が選出できなかったときなど、特定条件においてのみ象徴的役割の大統領が解散。

1990年のドイツ再統一前後の叙述では、モドロウ、クレンツ、デメジエールなどの人名に懐かしさを覚えます。

首相名の記憶に当たっては、当然(しばしば連立となる)与党も同時に覚える必要がある。

近年について、比較的ややこしいのが、1998年にSPDと、初めて政権に参加した緑の党が連立してシュレーダー内閣成立、それが2005年にCDUとSPDの大連立となったメルケル内閣に代わり、2009年以降は大連立を解消した、CDU・FDP与党のメルケル政権となる。

非常に読みやすくて良い。

170ページ程なので分量的にも楽。

初心者向けの良質なテキストだし、中級者以上が知識の確認のために読んでも有益。

手堅い良書と言えましょう。

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