万年初心者のための世界史ブックガイド

2011年8月4日

30冊で読む世界史 その1

Filed under: おしらせ・雑記 — 万年初心者 @ 06:00

これまで結構な数の本を紹介してきましたが、ブックガイドとしては乱雑過ぎて、どれを読もうか迷う方がいるかもしれません。

このブログを隅から隅まで読む暇のあるのは、間違いなく書いた本人だけでしょう。

一応地域別カテゴリテーマ的カテゴリに分かれた書名一覧があり、各書を五段階で評価してますので、評価5または4の本を優先して読んで頂くという手もありますが、それでも数が多いし、初心者には向かない本もある。

そこで、以下の基準に則り、暫定的な必読書リストを作ってみることにしました。

(1)地域別カテゴリを基本に30冊で初心者が世界史を概観できるリストを作る(ただし近代日本は除外)。

(2)長大なシリーズものでない限り、上・下巻などは「合わせて1冊」と数える。

(3)初心者が通読困難な古典的著作などは入れない。

(4)網羅性に出来るだけ配慮するが、叙述範囲が広いというだけの、つまらない本は挙げない。

(5)個人の理解度・嗜好・費やせる時間の違いを考慮して代替書を出来るだけ挙げる、また個別的テーマに関わる本や最も初歩的な段階を脱した時点で読む発展的テキストなども適時提示する。

補足として、なぜ30冊なのかと言うと、10冊・20冊ではさすがに少なすぎて世界史をカバーするのは不可能、40はキリが悪い、50だと少し多すぎる、100は論外、という感じです。

では、早速はじめましょう。

まず、最も広い範囲を対象とするものとして、アジアヨーロッパから、(1)ウィリアム・マクニール『世界史』(中央公論新社)(2)宮崎市定『アジア史論』(中公クラシックス)を挙げる。

世界史全体を概観する本としては、私の知る限りこの二つが白眉。

同じ宮崎氏の『アジア史概説』(中公文庫)でもいいが、やや量が多いので上記本を。

ただし必ず最初にこの二書を読むべきだというのではありません。

ここで挫折してもしょうがないので、以下に挙げる本のうち、特に興味の持てるもの、読みやすそうなものから読んで頂いた方がいいです。

もちろん最初に読んでも構いませんが、まとめの意味で最後に読んでもいいでしょう。

その辺は臨機応変に。

さて、それから個々の地域に入るわけですが、オリエントでいきなりつまづく。

そもそも苦手分野だし、「これは」と思う本に出会ったことも無い。

中公旧版全集の貝塚茂樹『世界の歴史1 古代文明の発見』(中公文庫)は面白かったが、オリエントではなく中国やインドが主流だし、三笠宮崇仁親王『ここに歴史はじまる (大世界史1)』(文芸春秋)杉勇『古代オリエント (世界の歴史1)』(講談社)ももう一つインパクトに欠けるし、青木健『アーリア人』(講談社選書メチエ)で代用するのもちょっと違う気がする。

やむを得ず、消去法で(3)岸本通夫『古代オリエント (世界の歴史2)』(河出文庫)を選択。

自分でもやや不本意ですが、ご容赦下さい。

ギリシアでは、まず(4)『世界の名著 ヘロドトス・トゥキュディデス』(中央公論社)を。

「おいおい、古典的著作は入れないんじゃなかったのか?」と言われるでしょうが、これは少々無理しても読む価値有り。

高校教科書に名前が出てくるような史書では絶対外せない定番ですし、読了すれば非常な充実感が持てる。

それが自信になって、プルタルコス『英雄伝』(ちくま学芸文庫)カエサル『ガリア戦記』(講談社学術文庫)スエトニウス『ローマ皇帝伝 上・下』(岩波文庫)タキトゥス『年代記 上・下』(岩波文庫)などの著作に挑戦する足掛かりにもなる。

教科書には「ヘロドトスが物語風歴史、トゥキュディデスが『科学的』(ないし批判的)歴史」というふうに書いてますが、実際上記訳書に当たってみると、その区別が実感できます。

分量的にはヘロドトスの方が大分多いが、比較的スラスラとページを手繰れます。

しかしトゥキュディデスに入ると、一気に読むスピードが落ちるでしょう。

だが両者とも抄訳なので、ちょっとだるいなと思った頃に省略となるので、初心者にとっては助かる。

岩波文庫の全訳(『歴史 上・中・下』『戦史 上・中・下』)に取り組む前にこちらで肩慣らしをしておきましょう。

あと、普通の概説書として(5)澤田典子『アテネ民主政』(講談社選書メチエ)がよくまとまっていて有益。

他に個別的分野の本として、森谷公俊『王妃オリュンピアス』(ちくま新書)が大傑作なのだが、冊数の都合で泣く泣く落とす。

ローマは、初心者にも読みやすい(6)モンタネッリ『ローマの歴史』(中公文庫)を。

あるいは、塩野七生『ローマ人の物語』(新潮社)のうち、最初の二巻『ローマは一日にして成らず』(新潮文庫)『ハンニバル戦記』(新潮文庫)をとりあえず読むということでもよい。

「全15巻のうち、1、2巻だけ読むの?」と言われるでしょうが、私はそういうのも「有り」だと思います。

それにこのシリーズの出来は、1、2巻と4巻5巻がピークで、後は落ちる一方ですから。

実はローマ史は上記モンタネッリ1冊のみ。

いくら全30冊といってもそりゃないだろう、と我ながら感じるので、せめて南川高志『ローマ五賢帝』(講談社現代新書)を入れようかと思ったのですが、これもやむを得ず除外。

ただし初心者向け啓蒙書としては、真っ先に読むべき本だとは申し上げておきます。

他には、一般常識を得るために阿刀田高『旧約聖書を知っていますか』(新潮文庫)同『新約聖書を知っていますか』(新潮文庫)を、有名人物の伝記的作品として秀村欣二『ネロ』(中公新書)辻邦生『背教者ユリアヌス』(中公文庫)を推薦します。

そして出来れば最終的には、エドワード・ギボン『ローマ帝国衰亡史』(ちくま学芸文庫)の通読に挑戦して頂きたいと思います。

ビザンツは、井上浩一『生き残った帝国ビザンティン』(講談社学術文庫)でもいいが(7)井上浩一『ビザンツとスラヴ (世界の歴史11)』(中央公論社)ならロシア東欧もカバーできてお得。

欧米史では、(8)アンドレ・モロワ『英国史 上・下』(新潮文庫) (9)同『フランス史 上・下』(新潮文庫)(10)同『アメリカ史 上・下』(新潮文庫)、とこれでイギリスフランスアメリカ主要国三つが一気に埋まった。

度々述べておりますが、この三部作の効用は初心者にとって驚くほど高い。

中央公論様、新潮から版権を買い取って文庫で復刊されては如何でしょうか。

ドイツが無いなあと思われるでしょうが、ご心配無用、(11)坂井栄八郎『ドイツ史10講』(岩波新書)という最適な本がございます。

イタリアはもちろん(12)藤沢道郎『物語イタリアの歴史』(中公新書)で決まり。

上記英仏米独伊五ヵ国についての通史代替書・個別的分野参考書は多過ぎて挙げ切れない。

通史では、まず福田恒存『私の英国史』(中央公論社)をこなした後、やや程度が高くなるが、トレヴェリアン『イギリス史 全3巻』(みすず書房)ピエール・ガクソット『フランス人の歴史 全3巻』(みすず書房)ゴーロ・マン『近代ドイツ史 1・2』(みすず書房)の三点を読破できれば申し分なし。

ゴーロ・マン著は30冊リストの中に入れたい位だが、分量が多めなので泣く泣く除外。

しかしこの本は本当に優れています。

難解な概念を使わず、政治と社会と思想の流れをパノラマのように見せつつ、押し付けがましくない一貫した史観を提示し、人物の魅力的描写に力を注ぎ、しかもそれを日本の高校レベルの読者にも翻訳では読めるレベルで成し遂げているのだから、ほとんど神業である。

機会があれば是非お読み下さい。

個別テーマ対象の本としては、ドイツ史関連から(13)林健太郎『ワイマル共和国』(中公新書)(14)セバスチャン・ハフナー『ヒトラーとは何か』(草思社)をピックアップ。

冊数からして通史的著作以外の本を挙げる余地は極めて小さいが、この二つは初心者向け啓蒙書の傑作として外せない。

ハフナーの本は、他にも『ドイツ帝国の興亡』(平凡社)『図説プロイセンの歴史』(東洋書林)も強くお勧めします。

モンタネッリの『ルネサンスの歴史 上・下』(中公文庫)も是非。

上記に加えて(15)ジョージ・ケナン『アメリカ外交50年』(岩波現代文庫)も。

この本も得られる知識の効用の高さ、史観の公平さ・客観性がずば抜けており、初心者必読。

他の啓蒙書では、書名一覧の評価も参考にして、佐藤賢一『英仏百年戦争』(集英社新書)同『カペー朝』(講談社現代新書)菊池良生『神聖ローマ帝国』(講談社現代新書)藤沢道郎『メディチ家はなぜ栄えたか』(講談社選書メチエ)など読みやすいものを手に取り、出来るだけ数をこなすことを意識して頂くと宜しいかと。

続いてダフ・クーパー『タレイラン評伝 上・下』(中公文庫)プティフィス『ルイ16世』(中央公論新社)など、やや程度の高いものにも取り組んで下さい。

スペインは0冊ですが、もし入れるなら、あまり知られていない本ですが、茨木晃『スペイン史概説』(あけぼの印刷社)を。

ついでに挙げると、ツヴァイク『マゼラン(附アメリゴ)』(みすず書房)は極めて面白い伝記。

オランダも迷ったんですが、結局岡崎久彦『繁栄と衰退と』(文春文庫)は入れず。

読む場合、日米関係がどうたらとかいう現在の問題に引き付けて論じた部分が鬱陶しければ飛ばしていいでしょう。

それを差し引いても、この岡崎氏著は実に面白い歴史物語です。

東欧・北欧の北欧部分は、もし読むのなら、とりあえず武田龍夫『物語北欧の歴史』(中公新書)1冊でいいんじゃないですか。

ロシアでは、上記『ビザンツとスラヴ』の他、ソ連史の名著として、ジョージ・ケナン『レーニン・スターリンと西方世界』(未来社)もリストに入れたかったのだが、全くの初心者では通読困難ということで、やむを得ず外した。

とはいえ、本当に多くの有益な視点が含まれた傑作ですので、余裕があれば是非お読み下さい。

ちょうど半分の15冊まで行きましたので、本日はこれまで。

続きは次回。

(追記:続きはこちら→30冊で読む世界史 その2

広告

WordPress.com で無料サイトやブログを作成.

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。