万年初心者のための世界史ブックガイド

2011年5月21日

上杉忍 山根徹也 編 『歴史から今を知る  大学生のための世界史講義』 (山川出版社)

Filed under: 近現代概説 — 万年初心者 @ 06:00

図書館で偶然目に付いたのを全く何の気なしに手に取ったもの。

副題に心引かれたのかも。

中身は、横浜市立大学の先生が、学生向けに近現代500年間の世界史を概説したもの。

日本の青少年の歴史的なことがらへの徹底した無関心を憂いて設置された全学共通科目の世界史授業を基に、大学教科書の体裁をとる読み物として出版したと、まえがきに書いてある。

全体の構成として、現代をグローバリゼーションの時代と捉え、その特徴を資本主義的世界体制と主権国家体制の並立であるとし、その発展を五つの段階(前段階を入れると六つ)に区分している。

(0)グローバリゼーション以前(~16世紀)

(1)資本主義的世界体制の形成の時代(1492~1770年)

(2)パクス・ブリタニカの時代(1770~1873年)

(3)帝国主義の時代(1873~1945年)

(4)冷戦の時代(1945~1989年)

(5)現在のグローバリゼーション(1989年~)

章分けで言うと、全12章のうち、(0)が1章、(1)の世界関係の叙述が2章、日本関係が3章、(2)の世界が4章、日本が5章、(3)が6~9章、(4)が10、11章、(5)が12章。

まあ標準的なページ配分。

以下、個々の感想を脈絡無く数点だけ。

まず第1章で、アブー・ルゴドという人の「13世紀世界システム論」というものを採り上げている。

モンゴル征服以後の世界規模の貿易体制を指し、これは近世以降のヨーロッパ主導の近代世界システムよりも平等的・互恵的な側面があったとされている。

最初の掴みとしては面白い導入。

近世初頭の世界地図が載っているが、初心者は、16世紀西欧の進出で非西欧世界が瞬く間に支配されたとはイメージしない方がよい。

アメリカ大陸のアステカ・インカ両帝国は即座に覆滅されたが、ユーラシアのオスマン朝、ムガル朝、明朝の三大帝国に対してはヨーロッパはまだ手が出せない状態(むしろムガル朝は創成期、そしてオスマン朝のバルカンからの中東欧侵攻は16世紀に本格化したことを想起)。

建国間もないサファヴィー朝や日本も同じく。

17世紀帆船で来た西欧人に対しては鎖国できたが、19世紀蒸気船で来た欧米人は追い払えなかった。

近世の大航海時代と、近代の産業革命のヨーロッパの実力差を何となく頭の片隅に入れておく。

社会主義に関する記述で、マルクスの剰余価値説は賛否が分かれていると書くより、理論的には全く間違いだが、無制限・無規制の資本主義による弊害を描写する比喩としては多くの示唆に満ちていると書いてもらった方がすっきりします(引用文(佐伯啓思3))。

日本の開国について、幕府の外交を評価し、全く諸外国のなすがままに不平等条約を受け入れたとは言えないとするのは、中公新版世界史全集『25 アジアと欧米世界』と同じく。

第二次世界大戦時のドイツ占領地のやたら詳しい地図が載ってる。

もののついでに絶滅収容所の位置を確認。

ポーランド国内の1929年の国境で、アウシュヴィッツ・ビルケナウが西南端、マイダネウがワルシャワから見て南東、国土のちょうど中央にあるルブリンのすぐ側、トレブリンカがワルシャワから北東、中央北部。

160ページほどで近現代世界史500年間を叙述するのはそもそも至難の業なのはわかっているが、どうももう一つ。

楽に読めるが、あまり得たものは無い。

時々、随分平板なこと書くなあと思う部分もあった。

高校世界史があやふやな人が、ざっと通読して要点と大まかな流れを身に付けるにはよいのかもしれないが・・・・・。

ちょっと評価に苦しむ本でした。

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