万年初心者のための世界史ブックガイド

2011年5月15日

小田中直樹 『歴史学ってなんだ?』 (PHP新書)

Filed under: 史論・評論 — 万年初心者 @ 06:00

お久しぶりです。

大震災という不慮の事態が生じたので、だいぶ間が空きましたが、とりあえず今日から再開します。

おそらく週一くらいの更新頻度になるかと思いますが、1000記事目まであと20弱ですので、そこまでは何とか続けたいと思います。

さて本書ですが、ちょっと前に出た本という感覚だったが、2004年刊だからもう7年前になるのか・・・・・・。

読もう読もうと思っていたが、今まで放ったらかし。

本書だけでなく、そんな調子で放置していた本で、このブログの記事にするために手に取った本が少なくない。

たとえ訪問者がゼロでも、それだけでブログを作った価値があるというもの。

また、感想文なり要約なりを書くつもりで読書に挑むと、集中して読めることに加え、重要な部分とそうでない部分を区別して主要な論旨を掴もうと意識するようになり、読解力と内容理解・内容記憶にも良い影響があるように思われます。

本筋から外れた枝葉の部分は飛ばし読みにするなど、メリハリを付けた読み方をするようにもなり、途中で通読を断念する確率も随分下がりました。

閑話休題。

本書は歴史学の根底的課題を考察する本。

(1)「史実」を本当に明らかにできるか、(2)歴史学は社会の役に立つのか、(3)歴史家は何をしているかという、三つの問題設定を行なって話を進めていく構成。

こう書くと大仰な感じがするが、中身は「です・ます」体で話し言葉に近い文体なので、非常に読みやすい。

(1)については、構造主義の言語論的転回からくる批判にも関わらず、史料批判を通じて根拠を問い続け、絶対的真実ではないが「コニュニケーショナルに正しい認識」に至り、そこから「より正しい解釈」に達することは可能であるとしている。

(2)従軍慰安婦問題というややキナ臭い例を用いて、歴史学は、集団的アイデンティティや記憶に介入する形で(直接的にで)はなく、あくまで真実性を経由して個人への知識の供給に努めることによって社会の役に立つことができるとする。

(3)は、世界史教科書の行間に見い出される歴史観の変遷、日本の戦後史学の簡略な概観、歴史家のメッセージの重要性など。

砂糖の世界史』、『茶の世界史』、『ローマ人の物語』、『ローマ五賢帝』、『フランス革命 歴史における劇薬』、『新書アフリカ史』、『繁栄と衰退と』など、平易かつポピュラーな啓蒙史書を引用しながらの叙述は親しみやすい。

しかし、200ページ弱の短さで読みやすいのはいいものの、出来れば倍ほどの分量でより詳しく説明して欲しかったところではある。

期待が大き過ぎた分、少々物足りなさが残った。

とは言え、比較的高度な内容をよく噛み砕いて説明してくれている本なので、初心者は読んで損は無いでしょう。

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