万年初心者のための世界史ブックガイド

2011年2月17日

引用文(ハイエク2)

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フリードリヒ・ハイエク『隷従への道』(東京創元社)

第十章 「なぜ最悪なものが最高の地位を占めるか」より。

このようにかなり同じ見解をもっている多数を擁する強力な集団が、社会の最善の人々によってでなくて、最悪の人々によって形成されがちであるということについては、三つの主要な理由がある。かかる集団が選び出される原則はわれわれの標準によれば、ほとんどまったく消極的(ネガティヴ)なものである。

まず第一に、一般的にいって、個人の教育と知識が向上すればするほど、個人の見解や趣味の相違がますますいちじるしくなり、特定の価値体系に対する個人の同意がいよいよ期待されにくくなるということは、ありそうなことである。これに反して、もしわれわれが高度の統一性と単なる外観上の類似性を求めようとするならば、より粗野で、より「平俗的」な素質と趣味が一般的であるところ、すなわち道徳的水準と知的水準のより低いところまで降らなければならない。このことは大多数の人々の道徳的水準が低いということを意味しているのではなくて、ただその価値体系のきわめて似ている最大多数の集団の道徳的水準が低いということを意味しているにすぎないのである。最大多数の人々を結びつけるものは、いわば最小の共通分母である。生活上の価値観を、他のすべてのものに強要しうるほどに強力な多数を擁する集団が必要であるとすれば、それはきわめて多様で、かつ洗練された趣味をもっているようなものではなくて、言葉の悪い意味における「大衆」、すなわち創意性や独立性に最も欠けている人々をつくり、個人の数の圧力をその特定の理想のもとに屈服させることのできるようなものであるだろう。

けれども独裁者たらんとするものは、まったく単純かつ素朴な素質のたまたまよく似ている人々を基礎にしなければならないのであるが、人々の数は目的遂行の可能性を保証しない。独裁者たらんとするものは、より多くの人々を同一の単純な教義に改宗させて、その数の増加を図らなければならない。

ここに第二の消極的な選択の原理が入ってくる。独裁者はすべての扱いやすく、騙しやすい人々の支持を得ることができるであろう。これらの扱いやすく騙しやすい人々は、自分自身の確固たる信念をもっておらず、したがって彼らの耳に声高く頻繁に鳴りひびきさえすれば、受け売りの価値体系といえども、これを簡単に認めるような人々である。こうしてその考えが漠然としていて、不完全なために簡単に動揺しやすい人々や、感情や熱情に駆られやすい人々が、全体主義政党の党員数を増やすのである。

密接に結びついた同質的な支持者の集団をつくり出すために慎重に努力して巧みなデマを流すことは、第三のおそらく最も重要な消極的な選択原理をもたらすことになる。人々にとっては消極的なプログラム――敵を憎むとか、裕福なものを嫉むような――に同意することの方が、積極的な任務に同意することよりも容易であるということは、人間性に共通なことであるように思われる。われわれ」と「彼ら」の対照、集団以外の人々に対する共通の闘争ということは、共同の行動のために集団を強固に結合しようとする教義の本質的な要素であるように思われる。したがってそれは単に政策の支持のみでなく、巨大な大衆の無条件な忠誠を得ようとする人々によって常に利用されている。彼らの観点からすれば、積極的なプログラムよりも行動の大きな自由を留保しうるという利益をもっている。敵が「ユダヤ人」や「富農」のように国内にあろうと、国外にあろうと、敵があるということは、全体主義的指導者の兵器庫における欠くことのできない必要物であると思われる。

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