万年初心者のための世界史ブックガイド

2010年12月12日

ハインツ・ゴルヴィツァー 『黄禍論とは何か  その不安の正体』 (中公文庫)

Filed under: 史論・評論 — 万年初心者 @ 06:00

1999年草思社から単行本で出たのを2010年文庫化したもの。

著者はドイツ人史家で、原著は1962年刊。

1870年代から第一次世界大戦までの帝国主義時代の欧米における、黄色人種脅威論に関する書。

まず総論があって、その後、英・米・露・仏・独の順番に各国ごとの分析。

多くの知識人、ジャーナリスト、政治家の言説を採り上げている。

その固有名詞は一部を除いて特に憶えなくてもいいでしょう。

抽象的理論ではなく、具体的事例を次々挙げていく構成なので、面白くスラスラ読める。

帝国主義時代、地球上のほとんどすべてが欧米列強によって分割され、表面上西洋が圧倒的優位を誇っていた時期の、欧米人の心の底に潜む不安感を描き出している。

「黄禍」といっても、その中心対象は、ほぼ中国と日本に尽きる。

日本は主に日清・日露の戦争後について。

中国はアヘン戦争で国を開いてから「眠れる獅子」と呼ばれていた時期だけでなく、日清戦争敗北後においても、その膨大な人口が与える圧迫感から脅威視されることが多かった。

低賃金労働による輸出洪水、移民の氾濫、近代技術の模倣・習得による軍事力整備と膨張政策についての懸念が西洋人の脳裏に付き纏う。

本書に挙げられている様々な言説を読み進んでいくと、一部を除きアジアへの蔑視というよりその潜在的能力に対する不安からくるものなので、別に不愉快な感じは受けない。

人種・民族・文化に関する偏見の話でも、日本人読者にとっては、こちらが「被害者」なので、気楽である。

とはいえ、我々としては本書を読んで自らの鏡とし、例えば硬直して偏執狂的な反中反韓感情の虜にならないよう自省すべきなんでしょう。

興味深いサブテキスト。

読みやすいし、分量も多くないので、通読は大した手間でない。

気が向いたら読んでおいても損はないです。

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