万年初心者のための世界史ブックガイド

2010年10月25日

本村凌二 『古代ポンペイの日常生活』 (講談社学術文庫)

Filed under: ローマ — 万年初心者 @ 06:00

1996年中公新書から出た『ポンペイ・グラフィティ』が、増補改訂の上、2004年『優雅でみだらなポンペイ』(講談社)というタイトルの単行本になり、それをさらに改題して文庫化したのが本書。

帝政ローマ時代、紀元79年ヴェスヴィオ火山の噴火で突如滅んだナポリ南の都市ポンペイの遺跡から見い出される告示・広告・落書きなどを分析して、当時のローマ帝国地方都市の日常生活を再現しようとする本。

このポンペイは用語集で確認したところ、今の教科書には全然載ってないみたいですね。

歴史の主要な流れには関係なくても、極めて著名な事例ですから、日本史教科書に赤穂浪士の討ち入りが脚注で載ってるように、これもとりあえず名前だけでも載せたらいいんじゃないかと思うんですが。

79年当時在位していたのはティトゥス帝。

ネロ死後の内戦を収拾して安定した統治を実現したヴェスパシアヌス帝の息子。

このティトゥス帝も名君として知られ、被災民の救援に力を尽くしたが、わずかな在位期間の後に急死。

弟のドミティアヌスが跡を継ぐがこの人は普通暴君とされ、その死後にネルヴァが即位、五賢帝時代が始まる。

ポンペイの歴史としては、同盟市戦争で自由民にローマ市民権が与えられ、のち自治市から植民市になったというようなことが書いてある。

日本語の訳語だと逆のイメージを持ちますが、確か「自治市」が不完全市民権保持で、「植民市」の方が完全な市民権を持つ格上のカテゴリなんですね。

もっともこの辺はっきりと頭に入っていませんので、これ以上は書かないでおきます。

本文に入ると、第1章は大噴火の描写とその時犠牲になった大プリニウスの行動、それを伝えた甥の小プリニウスの有名な文章の翻訳、近世以降の発掘の歴史について。

第2章は公職選挙用の推薦文ポスターの具体例。

第3章で前章の内容を踏まえて、地方都市における自治の実情を考察している。

第4章は猛獣狩りや剣闘士試合などの見世物に関する広告など。

第5章は自宅や公共建築物、職人の作業場、居酒屋などでの落書きから見た生活風景の描写。

第6章は恋愛や性に関わる、娼家などでの落書き。

この章で、ネロの妃の一人ポッパエア・サビナが一時ポンペイに在住していたことを始めて知った。

第7章は当時の庶民がいかに文字を学習したかについてあれこれ。

第8章でローマ社会での識字率について考察。

なかなか良い。

興味深い具体的事例が次々出てくるので、極めて楽に読める。

簡単な社会史入門として悪くないでしょう。

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