万年初心者のための世界史ブックガイド

2010年10月7日

宮崎市定 『水滸伝  虚構のなかの史実』 (中公文庫)

Filed under: 中国 — 万年初心者 @ 06:00

文庫・新書になっている宮崎氏の一般向け著作は大体目を通しているのだが、これは今まで読んだことがなかった。

『水滸伝』については、明代に成立した四大奇書の一つで、北宋末に山東の梁山泊に拠った宋江以下百八人の豪傑が政府軍と戦い、それを打ち負かした後朝廷に帰順し、それから方臘の乱を鎮圧した、といったあらすじ以外何も知らないし、『三国志演義』と違って原作を読もうなどという気は全然起きなかったので、本書にも興味が持てなかった。

しかし試しに読んでみると、なかなか面白い。

『水滸伝』の話の筋を知らなくても十分読めるし、単純に北宋末期の概説として使える。

まず北宋の皇帝名をチェック。

太祖趙匡胤から始まって、以後太宗・真宗・仁宗・英宗と続き、王安石の新法で有名な神宗に至る。

神宗死後、哲宗即位、祖母の高太皇太后が摂政となり旧法党復活。

哲宗親政開始とともに新法党が巻き返すが、哲宗は若くして死去。

弟の徽宗即位、母の向太后が新法・旧法両党均衡策を採るが、太后死後再度新法党政権に。

この時新法党強硬派として台頭したのが蔡京で、南宋の賈似道と好一対の奸臣とされる。

蔡京と宦官の童貫に誤られた徽宗は止めどない奢侈生活に耽溺し、靖康の変という亡国の事態を招くことになる。

『水滸伝』はこの徽宗時代を舞台にしており、本書では、宋江はじめ小説の中に出てくる人物と実際の史実との関わりについて細かく分析している。

なお「方臘の乱」は数ある中国の民衆反乱のうちでは、明代の「鄧茂七の乱」と並んでマイナーな部類に属し、高校世界史ではあまり出てきませんね。

後半ややめんどくさい部分があるが、煩瑣なところは飛ばし読みでいいでしょう。

宮崎氏の本を新規に読むのは久しぶりですが、やはり平明かつ豪快な筆致は素晴らしいと感じ、大いに堪能させて頂きました。

他の著作と同様、こちらも初心者が十分楽しめる本です。

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