万年初心者のための世界史ブックガイド

2010年8月24日

引用文(内田樹5)

Filed under: 引用文 — 万年初心者 @ 06:00

内田樹『女は何を欲望するか?』(角川oneテーマ21)より。

価値観はばらけている方がよい、というのは私の持論である。有限の希少財に同じ欲望を持つ多数の人々が雪崩打って殺到することは、誰にとっても生き延びる上で不利なことである。だからこそ太古から人間社会では、その成員たちを細かく下位集団に分割し、それぞれが自分の欲望を「他の集団と競合しないもの」に照準するという知恵を働かせてきたのである。

それは喩えて言えば「潜水艦の遮蔽壁」に似ている。潜水艦は無数の遮蔽壁によって、いくつもの船室に分けられている。だから、ある箇所が浸水しても、ハッチを閉めれば、船体そのものは浮力を維持できる。それがシステムを細分化することのメリットである。潜水艦が遮蔽壁のない「ワンルーム」であったら、わずかなひび割れからの浸水で、船はたちまち沈没してしまうだろう。

社会をいくつものニッチに区分けし、それぞれに別の機能を分配し、あいだに擬制としての「壁」を設けることには、手間も暇もかかる。しかし、それは全員のふるまいが同一のものになるリスクを回避するための人類学的コストなのである。「男は男らしく」「女は女らしく」「子どもは子どもらしく」「大人は大人らしく」「老人は老人らしく」・・・・という社会的に設定された「らしさ」は、そのような人類学的なセグメントである。

「身分」や「階級」もそうだ、とは内田先生のお立場では決しておっしゃらないでしょうが、私はそう思います。

広告

WordPress.com で無料サイトやブログを作成.

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。