万年初心者のための世界史ブックガイド

2010年7月15日

藤田勝久 『項羽と劉邦の時代  秦漢帝国興亡史』 (講談社選書メチエ)

Filed under: 中国 — 万年初心者 @ 06:00

著者には中公新書『司馬遷の旅』などの著作もあります。

私は中国史のすべての時代の中でこの秦末漢初が一番好きで、中国史のすべての人物のうちで劉邦が一番好きなので、これを読んでみた。

戦国時代の秦の台頭、南方の大国楚の社会と文化からはじまって、漢王朝の隆盛期まで。

秦の制度と楚などの風土・習俗との相克を常に対比させながらの叙述。

各国の興亡を指導者の個性ではなく、システムの違いに重点を置いて説明していく。

秦の郡県制が各地方の固有文化との軋轢の中で崩壊した後、項羽の分封体制となり、それが漢初の郡国制(中国西部は郡県制、東部は異姓諸侯分封から劉氏へ)を経て、景帝・武帝時代の実質郡県制へ、という大きな流れに沿った内容。

『史記』や『漢書』の記述を考古学的発見や他の史料によって補正しながら、話を進めている。

この時代の諸侯・将軍・謀臣などの固有名詞はかなり知っているが、改めて読むと結構記憶から抜け落ちていたり曖昧だったりする部分もあり、再チェックしながら通読した。

具体的記述については、以下一点だけ。

秦末の陳勝・呉広の乱について。

この二人は楚出身で、反乱後、国号を「張楚」とし、当初自分たちは楚の将軍項燕と始皇帝の子扶蘇であると称した。

項燕はともかく、温和な君子で人格者との世評があり、二世皇帝胡亥に自殺させられたとはいえ、あくまで敵国秦の人間である扶蘇がなぜ楚人の旗印になりえたのか、ということを考察しているのだが、それが中々面白く「ほう」と感心してしまった。

悪くはないが、上に書いた部分以外では目から鱗が落ちるといった感じは受けなかった。

私はそれなりに面白かったが、趣味の違う人にはやや退屈かも。

後半がやや落ちますか。

まあ普通の本です。

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