万年初心者のための世界史ブックガイド

2010年6月15日

ジェームズ・メイヨール 『世界政治  進歩と限界』 (勁草書房)

Filed under: 国際関係・外交 — 万年初心者 @ 06:00

去年の春ごろ、読売新聞の書評で見て「これは読むべき本だ」と思ったのだが、それきりになっていた本書を一年以上経ってようやく手に入れた。

著者は、体系化・制度化と自然科学的な理論的精緻さを重視するアメリカの国際関係論主流とは距離を置き、歴史と古典的教養を根底に置く英国学派に属するイギリス人の国際政治学者。

冷戦後の状況を踏まえた、主権・ナショナリズム・民族自決・民主主義・人道的介入などに関する考察。

主権と内政不干渉の原則が依然として重要であり、国際社会で為し得ることの限界を強く意識するプルラリスト(多元主義的)見解を支持し、理念・イデオロギーや人権・民主主義などの普遍的価値のためなら上記原則を乗り越えるのも許されるとするソリダリスト(連帯主義的)見解に懐疑的な目を向ける。

民主的な政治文化を欠いておりしかも非常に分裂した社会では、選挙による政治を導入したことによってかえって暴政への道が開かれたり、まさに選挙が防ごうとした類いの暴力的紛争が引き起こされたりした。

もちろん問題は、ある種の条件下では、民主化という治療の方が権威主義という病よりも悪いことがあるということである。

・・・・・人民主権の国々からなる国際社会では、君主たちのクラブよりも、相互に内部へ浸透する力は強いが、その異質性は大きい。そして君主からなる社会よりも進化する潜在力が強いが、文化的誤解や相互の憎悪やポピュリスト的排外主義を生みやすい環境でもある。

著者のこうしたごく大まかな主張は理解できたが、本文を読みながら少し脇道に入った論旨や見解がちょっと把握しづらい。

全く理解できないということもないが、かなり注意して読まないと頭が混乱する。

1990年代、冷戦終結後のイラク・カンボジア・ソマリア・ボスニア・コソヴォなどでの民族紛争についての知識が無いとわかりにくいでしょう。

私自身、内容を全て十分に理解したとは言えません。

一点だけ、本題から大きく外れた周辺的な事項をメモすると、米ソ冷戦時代には民族紛争が凍結されており、「旧植民地の一回限りの独立」以外で分離独立した民族は90年代まではほとんど無く、バングラデシュがその唯一の存在だが、それもインドという強力な支援者がいた故だったと書いているのが印象に残った。

(ナイジェリアのビアフラやコンゴのカタンガ、エチオピアのエリトリアなどが失敗例として挙げられている。エリトリアは冷戦後1993年独立。)

余談ですが、インダス文明の遺跡の多くが現在の領土でいうとインドではなくパキスタンにあることは典型的ひっかけ問題ですが、古代以来1947年印パ分離独立までの「インド史」は現パキスタン領も含むことと、独立後71年第3次印パ戦争と72年バングラデシュ独立まではパキスタンはインドを挟んで東西に領土を持っていたことにご注意。

短い割にはレベルはやや高い。

私には少し難しい部分もあり、期待したほどの面白さは無かった。

人にもよると思いますので、一度手に取ってご覧下さい。

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