万年初心者のための世界史ブックガイド

2010年6月8日

引用文(プラトン2)

Filed under: 引用文 — 万年初心者 @ 06:00

プラトン『国家 下』(ワイド版岩波文庫)より。

「ひとりの青年が、さっきわれわれが言っていたように、教育をかえりみず万事物惜しみする環境のなかで育てられたのち、ひとたび雄蜂どもの与える蜜の味をおぼえたとき、そしてそういう烈しく恐ろしい動物たちと――彼らは多彩にして多様な、あらゆる種類の快楽を提供するすべを心得ているのだが、そういう動物たちと――交わるようになったとき、おそらくそのときにこそ、彼自身の内なる寡頭制が民主制へと移行する、その変化の始まりがあるのだと思ってくれたまえ」

・・・・・・・

「こうしてついには、思うにそれらの欲望は、青年の魂の城砦(アクロポリス)を占領するに至るだろう。学問や美しい仕事や真実の言論がそこにいなくて、城砦が空になっているのを察知するからだ。これらのものこそは、神に愛される人々の心の内を守る、最もすぐれた監視者であり守護者であるのに」

・・・・・・・

「いまやそれらのものに代って、思うに、偽りとまやかしの言論や思わくが駆け登ってきて、そのような青年の中の同じ場所を占有することになるのだ」

・・・・・・・

「そしてこのまやかしの言論たちは、それらの徳を追い出して空っぽにし、自分たちが占領して偉大なる秘儀を授けたこの青年の魂を洗い浄めると、つぎには直ちに、<傲慢><無統制><浪費><無恥>といったものたちに冠をいただかせ、大合唱隊を従わせて輝く光のもとに、これを追放から連れもどす。<傲慢>を『育ちのよさ』と呼び、<無統制>を『自由』と呼び、<浪費>を『度量の大きさ』と呼び、<無恥>を『勇敢』と呼んで、それぞれを美名のもとにほめ讃えながら――・・・・・」

・・・・・・・

「ただし、真実の言論(理・ことわり)だけは」とぼくは言った、「けっして受け入れず、城砦の見張所へ通すこともしない――かりに誰かが彼に向かって、ある快楽は立派で善い欲望からもたらされるものであるが、ある快楽は悪い欲望からもたらされるものであって、前者のような快楽は積極的にこれを求め尊重しなければならないが、後者のような快楽はこれを懲らしめて屈従させなければならない、と説き聞かせることがあってもね。そういうすべての場合に彼は、首を横にふって、あらゆる快楽は同じような資格のものであり、どれもみな平等に尊重しなければならないと、こう主張するだ」

「そうです」と彼は言った、「間違いなく彼は、そのような心の状態でそのような態度をとるものです」

「こうして彼は」とぼくはつづけた、「そのときどきにおとずれる欲望に耽ってこれを満足させながら、その日その日を送って行くだろう。あるときは酒に酔いしれて笛の音に聞きほれるかと思えば、つぎには水しか飲まずに身体を瘠せさせ、あるときはまた体育にいそしみ、あるときはすべてを放擲してひたすら怠け、あるときはまた哲学に没頭して時を忘れるような様子をみせる、というふうに。しばしばまた彼は国の政治に参加し、壇にかけ上って、たまたま思いついたことを言ったり行ったりする。ときによって軍人たちを羨ましく思うと、そちらのほうへ動かされるし、商人たちが羨ましくなれば、こんどはそのほうへ向かって行く。こうして彼の生活には、秩序もなければ必然性もない。しかし彼はこのような生活を、快く、自由で、幸福な生活と呼んで、一生涯この生き方を守りつづけるのだ」

「まったくのところ」と彼は言った、「平等を奉ずる人間の生活というものは、あなたがいま述べたとおりのものです」

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