万年初心者のための世界史ブックガイド

2010年3月12日

ルネ・ミュソ・グラール 『クローヴィス』 (白水社文庫クセジュ)

Filed under: フランス — 万年初心者 @ 06:00

文庫クセジュは、どちらかと言うと苦手なのでできれば敬遠したいのだが、類書が少ないのでやむを得ずこれを読んだ。

メロヴィング朝フランク王国初代国王の伝記。

最初のフランス国王とは言えないが、本書カバーの言葉を借りれば、「フランスにおける最初の国王」なので、カテゴリはフランスで。

クローヴィスはサリー・フランク族に属する。

在位期間は481~511年。

西ローマ帝国滅亡が476年、東ゴート族によるイタリア征服が493年だから、オドアケルやテオドリック大王とほぼ同時代人か。

35ページに5世紀の東西ローマ皇帝の在位表が載っているんですが、名前を見た覚えはほぼ全ての人名であるのに、具体的人物像や在位順、即位と治世の経緯などは全然思い出せず、落ち込む。

ギボン『ローマ帝国衰亡史』の5巻と6巻で、この辺はかなり面白く読んだはずなのだが、内容をしっかり憶えておくのはやはり厳しい。

塩野七生『ローマ人の物語』の最終巻が文庫化された時に気合を入れて頭に入れることにしましょう。

父親のキルデリクスの後を継ぎ481年即位。

38ページの地図を見ると、当時のガリアは南西部は西ゴート王国、東南部はブルグンド王国が占め、北部はローマ人残存勢力でキルデリクスと同盟していたアエギディウスとその後を継いだ息子シャグリウスの領域に三分されており、フランク王国はシャグリウス領のさらに北、大西洋岸の一部を占めるのみ。

クローヴィスはまずシャグリウス領を併合。

ブルグンド国王グンドバドの姪クロティルドと結婚。

496年カトリックに改宗。

これは山村良橘『世界史年代記憶法』では、「ヨー(4)、クロー(96)ヴィスの改宗」という絶対忘れない憶え方が載ってました。

この改宗が、アリウス派に属する支配層とカトリックのローマ系住民の軋轢に苦しんだ他のゲルマン王国を尻目に、フランクの勢力伸張をもたらしたというのは高校教科書通り。

本書では他に、東ローマとの関係についても考察。

451年(奇しくも西ローマ、カタラウヌムでの対アッティラ戦と同年)カルケドン公会議で異端とされたにも関わらず、クローヴィスと同時期に在位した東ローマのアナスタシウス帝が単性論に傾く中で、ローマ教皇が東ローマから独立した権威をクローヴィスに保証したことなどが記されている。

507年西ゴート王アラリック2世と戦い、アラリックは敗死、フランクは南ガリアを手に入れ、西ゴートは以後ヒスパニアのみを領有することとなる。

パリに王城を構え、510年「サリ法典」制定、511年オルレアン公会議を召集した後、死去。

なお、サリ法典で、ローマ人とフランク人がそれぞれ殺害された場合の罰金額が、後者が前者より高額に定められているのは、民族差別の表れではなく、当時フランク族の間で一般的だった私的復讐(フェーデ)を抑えるためであり、むしろ王国内での法の統一を志向したものと見るべきだ、といったことが書いてあったのが印象に残った。

クローヴィス死後、王国は四子に分割。

以後の歴史はティエリ『メロヴィング王朝史話』に書いてあるようですが、この本は私には到底読めません。

要は北東部のアウストラシア・北西部のネウストリア、南東部のブルグンド(534年フランクに併合される)、南西部のアクィタニア(アキテーヌ)の四つの部分が、独立したり統一したり、複雑極まりない経緯を辿ることになるようです。

150ページと短いのは良い。

他の文庫クセジュの本と同様、生硬さや(日本人にとっての)説明の物足りなさなどは感じるが、そこそこ役に立つという印象を受ける。

ただできれば、こういう中世初期をテーマにした日本人著者の新書がより多く出て欲しいですが。

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