万年初心者のための世界史ブックガイド

2010年1月21日

ウィリアム・シェイクスピア 『リチャード三世』 (白水社uブックス)

Filed under: イギリス, 文学 — 万年初心者 @ 06:00

『ヘンリー五世』に続けてこれを読む。

ランカスター朝と同じく、ヨーク朝の国王も3人。

まずエドワード4世、エドワード5世父子。

次がエドワード6世ならランカスター朝国王の名が皆ヘンリなのと同じく記憶しやすかったのだが(しかも○世の部分まで対になってる)、最後はエドワード4世の弟で5世の叔父に当たるリチャード3世。

(「実際のエドワード6世」はヘンリ8世の病弱な息子で、続けてメアリ1世、エリザベス1世が即位することになる。)

このリチャード3世は、最後にヘンリ7世ことリッチモンド伯ヘンリ・テューダーに敗れたということからくる過度の脚色もあるんでしょうが、とにかく極悪非道・残忍・狡猾な怪物的暴君としてその名を知られている。

イギリス史上、失政のオンパレードだったジョン王の後、「ジョン2世」は結局現れませんでしたが、リチャードという名の王も、このリチャード3世以後出てこない。

チャールズ皇太子とダイアナ妃との間のお子さんは、確かウィリアム王子とヘンリ王子でしたから、近い将来「リチャード4世」が登位する可能性も無い。

それはひょっとして、このリチャード3世のイメージが悪過ぎるからかなと想像してしまう。

本作品の記述に従えば、とにかくやることなすこと、恐ろしい醜行の連続である。

まずグロスター公として、兄エドワード4世に従い、ヘンリ6世の息子エドワードを敗死させ、ヘンリ6世を捕らえ幽閉した後殺害。

エドワード4世の病が重くなると、王に讒言し、もう一人の兄クラレンス公ジョージを投獄させ、密かに暗殺者を派遣してこれを殺害。

1483年エドワード4世が死去し息子のエドワード5世が登位するが、リチャードは即、甥から王位を奪い、ロンドン塔に幽閉、4世王妃で5世の母エリザベスの弟と連れ子(王妃は再婚だったので)を殺害。

エドワード5世と弟のヨーク公リチャードも結局殺害。

かつて自らが敗死させたヘンリ6世の皇太子エドワードの妻アン・ネヴィル(「キング・メーカー」国王製造人と呼ばれ、最初ヨーク家陣営の有力者だが、その後内部対立から一時ヘンリ6世を復位させ、次いで敗れたウォリック伯リチャード・ネヴィルの娘)を、リチャード3世は言葉巧みに籠絡し彼女と再婚していたが、この妃も本書の描写によればリチャードに殺されたことになっている。

おぞましい悪行がこれでもかと述べられていくと、読者は誰でもヘンリ7世を救い主と感じるでしょう。

(しかし福田恆存『私の英国史』によれば、以上のリチャードの行為とされるものには証拠が無く疑わしいものも含まれているので慎重な検討が必要だとのことです。)

ヘンリ7世ことリッチモンド伯ヘンリはランカスター家に連なる人物。

仏国王シャルル6世の娘カトリーヌ(キャサリン)とヘンリ5世が婚約したことは『ヘンリー五世』の記事でも触れましたが、両者の間にヘンリ6世が生れて、ヘンリ5世は短い治世で死去。

カトリーヌ王妃がオーウェン・テューダーという人物と再婚し、そこから生れたリッチモンド伯エドマンド・テューダーがヘンリ7世の父。

母方の家系を辿ると、ランカスター家の祖であるジョン・オヴ・ゴーントの息子で、ヘンリ4世の腹違いの兄弟に当たるサマセット伯ジョン・ボーフォートという人物がおり、その孫のマーガレット・ボーフォートがヘンリ7世の母。

フランスに亡命していたリッチモンド伯ヘンリがイギリスに上陸、1485年ボズワースの野でヘンリとリチャード3世との決戦が行われ、ヘンリが勝利、リチャードは敗死。

ヘンリ7世が、殺害されたエドワード5世とヨーク公リチャードの妹エリザベスと結婚、ここにランカスター家の赤バラとヨーク家の白バラが一つに結ばれ、テューダー朝が成立、両者からはヘンリ8世が生れる。

非常に面白い。

どこまでが史実でどこからがフィクションか慎重に構える必要もあるが、リチャードのあまりに凄まじい人物造形に、強烈な印象を受ける。

文学的な価値を十分鑑賞できたかはともかく、強く心に残る作品だったのは間違いない。

シェイクスピアの史劇を比較的短期間に三つ読みましたが、どれも興味深く読めました。

バラ戦争の複雑な過程を頭に入れるのに非常に適切な本です。

台詞の中でさりげなく登場人物の家系や相関図を述べており、それらが無理なく頭に入る。

本書の末尾の系図も大変見やすく整理されているので、頻繁に参照すべき。

上記『私の英国史』も詳細でしっかりとした記述が役に立つ本ではあるが、説明が凝縮されているので、一読しただけだと人物とストーリーを頭に入れることが難しい。

本書のような文学作品で地ならしをしてから取り組むと、より記憶しやすいでしょう。

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