万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年11月9日

引用文(坂井榮八郎1)

Filed under: 引用文 — 万年初心者 @ 06:00

坂井榮八郎『ドイツ近代史研究』(山川出版社)、「帝国建設と自由主義の挫折」の章より(赤文字は引用者)。

・・・・・英独自由主義の比較においては、両者の発展傾向の基本的共通性とともに、ドイツの自由主義がイギリスのそれに比し、きわめて不利な条件下での発展を強いられたことが指摘されている。資本主義発展の後発性と工業化における国家のイニシアティヴ。貴族ホイッグの不在、あるいは力の弱さ。イギリスの自由主義が、議会政治の先進性と非民主的選挙権の組合せの下で、大衆の政治参加以前に「政権党」となりえたのに対し、ドイツでは条件の逆の組合せ(議会政治の後進性と最先端的な民主的選挙権)の下で、「自由主義時代」の最初から「下から」の、あまつさえ――実勢力はともかくイデオロギー的に――世界でもっとも革命的な社会主義政党の圧力にさらされていたこと。加えてドイツでは、自由主義がカトリック教会を最初から敵に回していたこと、等々。しかし自由主義が労働者層やカトリック教徒を統合しえなかったことについては、いわゆる「負の統合(Negative Integration)」への自由主義の加担からしても、自由主義自身がその責めを負わなければならないところが多い。

ここで「負の統合」というのは、大プロイセン的小ドイツ帝国に容易に同化しえない国民の一部に「帝国の敵(Reichsfeind)」の烙印を押し、この共通の敵に対する敵意をテコに他の相対的多数の国民を統合しようとする政治術策、ないし事実過程をさす。周知のように、その最初の大きな標的はカトリック教会であり、78年以降は社会主義者であった。「負の統合」をどの程度ビスマルクの意図的術策と見るべきかについては議論の余地があるが、文化闘争および社会主義者鎮圧法に、そう呼ばれうる事実過程が随伴していたことは確かである。他方、抑圧されたカトリック教徒はこの間――「負の統合」の反作用として――教会とカトリック諸団体の指導の下に、固有のサブカルチャーをもち、自由主義的=プロテスタント的市民文化世界とは隔絶した独自の生活世界をつくり出した。社会主義的労働者の生活世界もまた同じである。そしてこれが、自由主義的国民統合の課題と根底において相容れない事態であることはいうまでもない。

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