万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年10月26日

猪木正道 『軍国日本の興亡 日清戦争から日中戦争へ』 (中公新書)

Filed under: 近代日本 — 万年初心者 @ 06:00

著者の猪木氏は、大学時代から熟読していた高坂正堯氏の師として名前を知っており、文春大世界史講談社旧版世界史全集の戦後国際政治史の巻や、著作集を買って通読していた。

1914年生まれで未だご存命のはず。

著作集の近代日本政治史の部分は凡庸な教科書的通史ではなく、為政者の決断のポイントを明示し、それに対する明解な評価を下していく躍動感のある叙述で、強い印象を受けてはいたが、終戦後50周年に当たる1995年に出た本書は手に取ることがなかった。

その時期は、自分の考えが猪木氏の著作集を読んだ頃より相当「右傾化」していると自覚していたので、読んでも不快になるだけだろうと思ったので読まなかった。

それをなぜ今ごろ読む気になったのかというと、自分の考えがやや変わったというのもあるが、直接的には以下のブログの記事を読んだため。

先哲有言  猪木正道『軍国日本の興亡』中公新書、1995年

(↑こちらは、うちとは比べものにならない程、知的で高級なブログですが、残念ながら現在更新停止状態。)

近代日本の政治・外交史をざっと概観する本で、叙述範囲は、サブタイトル通り、主に日清戦争から始まり、最後は1945年の終戦までではなく日中戦争の勃発と泥沼化まで。

漫然と史実を並べただけの本ではなく、教科書では出てこない固有名詞や事実をピックアップして説明したり、著者独自の見解を交えながら話を進めていくので、飽きさせず記憶しやすい。

第一次世界大戦後の戦争観と国際世論の変化を重視し、自ら調印した九ヵ国条約とパリ不戦条約を破った日本の軍事行動とそれ以前の植民地大国の行為を区別し、前者を批判し自省する立場の本。

こうした価値観には、(現在では特に)大いに異論はあるでしょうが(私もあります)、これはこれで一つの見識であろうとも思います。

林健太郎氏も同じような立場でしたね。)

私自身、通読したところ、思った以上に反発を感じることが少なかった。

というより、そうした点がほとんど無かったことに我ながら驚いた。

「嘘つけ!!このチンケなネット右翼が!!!」と思われるかもしれませんが、本当です。

結局自分は「自虐史観」よりも民主主義の方が嫌いなんだなと、ここ数年つくづく思い知らされたので。

「右の左翼」とでもいうべき無思慮な過激派が世論の多数の支持を受け、下克上で国家を乗っ取り、帝国を破滅させた歴史を読んでいくと、先の大戦への評価はどうあれ、右とか左とか関係無しに反省すべきではないかと思えてくる。

最後の方がやや駆け足になるのが残念だが、悪い本ではない。

初心者は(自分含む)本書の見方にあれこれ反発する前に、事実関係の記述を学んで、昭和に入ってからの内閣順と在任年度とその時起こった主要事件くらいは頭に入れるべき。

ごく初歩的な段階での基本テキストとして十分推奨できます。

(ついでですが・・・・・。上記ブログで以下のように書かれてます。

余談だが、先日の「朝生」では、司会者から左の席の姜尚中氏や辻元清美氏が相手の意見を聞きつつも説得にまわる大人の対応する「体制側」に見え、右の席の西尾幹二氏が相手の意見を聞き入れず言いたいことだけを言う体制に反逆する革命家のようだった。

辻元氏は知りませんが、姜氏については『日本 根拠地からの問い』(毎日新聞社)や『憲法ってこういうものだったのか』(ユビキタスタジオ)などの対談集を斜め読みした限りでは、ブログ執筆者様と同じ感想を持ちました。)

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