万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年10月25日

引用文(バジョット2)

Filed under: 引用文 — 万年初心者 @ 06:00

『世界の名著72 バジョット ラスキ マッキーヴァー』(中公バックス)より。

君主の権限が不明確であるということは、皮相浅薄な自由主義的制度論から見ると、たしかに欠点である。民衆政治においては、すべての権限は、認知できるものでなければならない。このような民衆政治は、政治権力をもつ国民――統治者たる国民――が、みずから適当であると判断し、その判断に従って統治するという考えに立っている。この考え方からすると、各行政部門の行為はすべて、国民の判定を受けねばならない。国民はその行為の是非について監視すべきである。またその行為がよくないと思われる場合には、種々の方法で異議申し立てをすべきである。しかるに、どのような行為をしたかを知らされないなら、判定できないし、またどのような行為をしたかわからないなら異議の申し立てもできない。したがってこの考え方によれば、隠された大権は違法である。おそらく、最大の違法になるであろう。

しかしこの秘匿性は、現在のところ、イギリスの君主制が効用を発揮するためには必要なのである。なにものにもまさって君主は、尊敬されなければならない。君主について詮索しはじめると、尊敬できなくなる。君主に関する特別委員会ができると、君主制の魅力はなくなるであろう。秘密が君主の生命である。魔法を、白日の下にさらしてはならない。君主を政治葛藤の中に引きずり込んではならない。さもないと、君主は全闘士たちから尊敬されなくなるであろう。また君主は、多くの闘士たちの仲間入りをすることになるであろう。君主に秘密の権限が存在することは、抽象的な理論によれば、わが立憲体制の欠点であるとされている。しかしそれは、イギリス程度の文明国にはありがちの欠点である。このような国では、はっきりした役に立つ権力が必要であるとともに、尊厳な、そしてそれゆえに不可知な権力もまた必要なのである。

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